VMware社は2014年8月25日から28日に開催した同社の年次カンファレンス「VMworld 2014」において、同社が推進するSDDC(Software Defined Data Center)の構想に沿って関連製品の拡張と新製品を発表した。同社がSDDCを発表してから2年が経過したが、今回の発表内容を見ると、製品の機能強化だけでなくパートナー企業とのエコシステムを強化することで、導入時の敷居を下げようとしていることが読み取れる。
エコシステムによる市場ポジションの強化
「VMworld 2014」は2013年同様、米国サンフランシスコのモスコーニ センターで開催され、2万人を超える来場者を集めた。VMware社は「VMworld 2012」でSDDC構想を発表し、サーバ仮想化からネットワークとストレージを加えたITインフラ全体の仮想化へとビジネス領域の拡大を開始し、「VMworld 2013」ではネットワーク仮想化製品であるVMware NSXとストレージ仮想化製品であるVMware Virtual SAN、そしてユーザーが同社の製品を使用して構築したプライベートクラウド環境をそのままパブリッククラウド環境へ移行可能とするパブリッククラウドであるVMware vCloud Hybrid Services(現 VMware vCloud Air)を発表し、SDDC構想が現実のものであることを証明した。そして、今回、ユーザー企業がSDDCをITインフラ基盤として取り入れるための製品の機能拡張だけでなく、他社製品とのエコシステムを実現していることが注目される。
VMware社はこれまでもさまざまな企業とのパートナー関係を有しているが、その多くは同社製品が管理対象とするハードウェアベンダーや同社製品上で稼働するミドルウェアやアプリケーションが中心であった。つまりこれまでのエコシステムはVMware社製品を頂点とし、ITシステムにおいて同社製品を補完するハードウェアやソフトウェアを提供するベンダーで形成するエコシステムであり、そこには競合となるような製品は含まれていなかった。しかし、今回発表した「OpenStack」、Pivotal社の「Cloud Foundry」、Docker社の「Open Container」との協業は、従来とは異なる競合製品とのエコシステムといえる。同社の意図は、これらの製品と単に競合するのではなく、同社環境とのインタフェースを提供することで、エンドユーザーに選択の自由を提供し、市場の変化を吸収し、市場におけるポジションをより強固なものとすることにあると考える(図1 )。
出典:VMware社の資料を基にITRが作成