企業のIT部門では、戦略/企画のゼネラリスト人材を重視する傾向にあり、システム実装の職能は需要が減りつつある。その一方で、ベテランのスキルやノウハウが継承できないことを問題視する声は少なくない。企業は、自社に見合った人材像を明確にすべきであり、システム構築の両端にあたる構想力と実装力を合わせ持つハイブリッド人材の確保・育成も考慮すべきである。
ベテラン人材の枯渇と継承されないスキルとノウハウ
団塊世代の60才定年に伴う大量退職によりベテラン人材が枯渇する、いわゆる2007年問題が取り沙汰されてからしばらく経過した。ベテラン人材が持つスキルやノウハウを伝承するために、雇用延長、再雇用措置で急場をしのいだ企業も多い。しかし、2012年頃から、こうしたベテランが65才を過ぎて再度の雇用の延長をせず退職し始める動きにより、再びこの問題がクローズアップされてきた。これは、再雇用で一時的に先送りされた、スキルやノウハウ伝承に関わる問題の顕在化といえるかもしれない。企業のIT部門でもこの問題に苦慮しており、ノウハウのマニュアル化など何らかの方法でスキル可視化を試みたり、旧来のノウハウで構築されたシステムの再構築を急ぎ、それを契機に、新システムにベテランのスキルやノウハウを移転したりといった工夫もなされている。しかしながら、こうした構造的な問題の解決が思うように進展せず悩んでいる企業は少なからず存在する。
さらに、経営者からのコスト削減プレッシャーが引き続き厳しく、情報子会社を含むIT要員を増員することができないことも状況を難しくしている。そして、人員配備では、戦略・企画系のゼネラリスト人材を重視する一方で、システムの実装に関わる開発者を減らすことが一般化している。特に、典型的な下積みキャリアと認識されがちなプログラマーに至っては、ユーザー企業だけでなく、ベンダー側でも今後重視しない傾向が、ITRの調査でも判明している(「未来のITシーズに関する調査」2014年4月)。同調査から、2020年までの技術者の需要を、ユーザー企業/ベンダー企業別に指数化した結果を示す(図1)。
出典:ITR(2014年4月調査)