コモディティ化とアーキテクチャの単一化によって、ハードウェア機器は企業ITシステムにおいて戦略的に重要ではないとする考え方が一般化している。しかし、ビッグデータ、仮想化、インメモリ処理といった最近のITトレンドの多くは、ハードウェアの性能向上と価格の下落によってもたらされている。適切なハードウェアの選択は、今後も企業のITインフラ構築にとって重要であることに再注目すべきである。
重要視されなくなったハードウェア
現在のサーバは、いずれのベンダーの製品でも、Intel社のアーキテクチャをベースとしたプロセッサを搭載し、OSにはMicrosoft Windows ServerかLinuxを採用したIAサーバの利用が拡大している。ベンダーごとの性能や機能の差異は縮小し、コモディティ化が進んでいる。これはストレージにおいても同様で、ハードディスクドライブ(HDD)はSeagate Technology社、Western Digital社、東芝など数社しか製造しておらず、ソリッドステートドライブ(SSD)で用いられるNANDフラッシュメモリも、Samsung Electronics社、東芝、Micron Technology社、SK Hynix社の4社でNANDフラッシュメモリ市場シェアの大半を占めている。各ストレージベンダーはこれらのベンダーから部品を調達しており、どこのストレージ製品であっても基本的なハードウェア性能には大きな差異はなくなっている。EMC社やNetApp社などのストレージベンダーでは研究開発費の大半を、ハードウェアではなく、ソフトウェアに充てている。その結果、現在のITインフラにおけるハードウェアは、どのベンダーの製品を選択するかという点では、企業のITシステムの戦略を左右するような重要性は失い、コスト性能比とサポートサービス力でのみで選択されるコモディティ化が進んだ分野となっている。
図1にITRが毎年行っている「IT投資動向調査2014」での2014年度に向けたインフラ/ハードウェア分野への投資意欲を示した。インフラ/ハードウェアの分野において、投資の増加が見込めるのはモバイル関連のデバイスと無線LANなどのネットワークやサーバ仮想化などであり、サーバ製品やストレージ製品に対しては、投資を前年度から増加させるとする企業の割合と、投資を減少させるとする企業の割合に差があまりなく、投資意欲は概ね低調となっている。さらに今後IaaSやPaaSといったクラウド・コンピューティングの利用が拡大した場合、より一層サーバやストレージなどのハードウェアでのベンダーやアーキテクチャの選択の重要性は減少し、価格とサービス内容によってITインフラを選択する傾向が強まることが予測できる。
出典:ITR「IT投資動向調査2014」