IaaSは市場成長に同期して、サービスの多様化とメニューの充実が進み、多くのベンダーで仮想プライベートクラウドを利用できるようになっている。旧来のIaaSは、Webシステム、一部の情報系システム、あるいは開発環境としての需要が中心であったが、現在は、基幹系/間接系をはじめとする業務システムの収容先としても多く用いられている。
IaaS市場の今
IaaSが市場成長を続けている。ITRが実施するIT市場調査「ITR Market View:クラウド・コンピューティング市場 2013」によれば、国内PaaS/IaaS市場における2013年度の市場規模は約1,170億円に拡大すると予測される。PaaS/IaaSの認知度と信頼性は年々向上していることから、特に大企業での利用が進むと見られ、同市場のCAGR(2012年~2017年度)は25.7%を予測している。2017年度には、2,642億円の市場規模に拡大することが見込まれる。
黎明期のパブリッククラウド市場は、企業の基幹システムというよりは、特定事業部向けのWebシステムや一部の情報系アプリケーションの需要によって支えられてきた。情報システムを丸ごと収容するのではなく、プロバイダーが高度に標準化したクラウド基盤/サービス仕様に見合うシステムを切り出して適用してきた。また、現行資産の稼働プラットフォームというよりも、新規開発や再構築時の受け皿として機能してきた。基幹系システムや大型の業務アプリケーションについては、自社で資源調達のうえ運用を業務委託する、あるいはインフラを包括的にアウトソーシングするといった手法がいまなお一般的である。
しかし、市場拡大期に入り、IaaS市場へのプレーヤーの新規参入とサービス多様化が進んだことで様相が変わりつつある。IaaSには品質や要求固有性に応じた複数種のサービス形態が登場し、L2/L3で接続できて柔軟な構築が可能な仮想プライベートクラウドのメニューが充実してきた(ITR Review 2013年11月号「レイヤー化するIaaS市場」#R-213111)。各ベンダーのサービスオプションも充足する方向にあり、PaaSレイヤーの機能(RDBMS、ロードバランサ、セキュリティなど)の拡充が見られる。こうした背景から、IaaSは以前にも増して収容可能なシステムの間口を広げており、市場の裾野拡大をもたらしている。