ITRでは、国内ERP市場の調査を毎年行っており、最新版は「ITR Market View:ERP市場2014」として発刊する。本稿では、ERPパッケージの初期導入から20年を迎える同市場の最新動向を速報として紹介するとともに、企業が今後注力を高めると予測される投資の大きな方向性について述べる。
初期導入から20年を迎える国内ERP市場
国内でERPパッケージが注目され、最初の導入事例が確認できるようになったのは1993年から1994年頃であり、この2014年で20年を迎える。それ以前にも、給与計算、総勘定元帳、MRPといった個別機能分野や、専門性が高い研究開発などの業務分野でパッケージが導入されることはあったものの、企業の基幹系業務に幅広くパッケージ導入が検討されることはなかった。ERPパッケージは、初期の頃に市場を牽引した大企業での導入が一巡して以降も成長を続け、2012年度のベンダー出荷ライセンスおよびサブスクリプションの金額は670億円程度にまで達している。初期の頃に比べれば成長性は鈍化したものの、レガシー刷新などで新たにERPパッケージを導入する企業はまだ少なからずあり、すでに導入したものの業務範囲やグループ/グローバルにスコープを拡大する企業などが、成熟した国内ERP市場を継続的に成長させる要因となっている。
また、国内ERP市場における主要製品を、大企業向け、中堅企業向け、中小企業向けに分けて売上金額割合の推移を見てみると、2008年度から2009年度を境に、中堅企業向け製品が大企業向け製品を上回るようになっており裾野が拡大してきている。この傾向は現在も続いており、従来大企業向けとされた製品も中堅向け市場でシェア拡大を図るために、短期・低価格で導入が可能なソリューションを充実させてきている。その一方で、中堅中小市場向けが主体であった製品が機能ならびにデータ構造を拡張するなど、基本機能を強化することで、中堅から大企業向けの導入を可能とするポテンシャルを持つようになってきている。その一例として、2つの代表的製品のデータ構造を比較してみる。奉行iシリーズは、典型的な中小から中堅企業向け製品であるのに対して、SAP ERPは大企業向けとして知られた製品である(図1)。
出典:公開情報を基にITRが作成
桁長の長短だけで製品が対応できる案件の規模が決定できるものではないが、昨今ではハードウェアの性能が大きく向上してきており、主要なデータ構造に余裕があれば、従来の規模の垣根が問題にならなくなりつつあるのも確かである。