ITRでは、毎年行っているIT投資動向調査の結果、クライアント企業から受ける質問や依頼されるプレゼンテーションの内容、およびクライアント企業へのヒアリングを加味し、多くの大手企業にとって重要と考えるIT戦略テーマを選定している。本稿では、2014年に向けてITRが抽出した8つの戦略テーマの概要、予測およびキーワードを提示する。中期IT戦略や次年度のIT投資計画の立案の際に参考にされたい。
ワークスタイルと業務プロセスの変革に関わるテーマ
1.多様なワークスタイルに対応した人材・就労管理の実現
中長期的な課題として、少子高齢化によって日本人の就労人口が減少することが懸念されているが、企業は人材の不足を補うために高齢者、結婚・出産後の女性、外国人などの雇用を促進すると考えられる。就労者のダイバーシティが進行するに従って、多様な雇用形態や就労形態に対応した就労環境を提供することが求められよう。パートタイムの就労者や期間雇用の契約社員など雇用形態が多様になるだけでなく、在宅勤務、非常勤、直行直帰といった自由度の高いワークスタイルもより一般的になっていくであろう。雇用形態や就労形態が多様な従業員が、高いモチベーションを維持しつつチーム力を発揮していくためには、人材の発掘やマッチングを可能とするタレントマネジメントの仕組みに加えて、柔軟性の高い就労管理や人事評価管理などの仕組みを必要とする。
2.コミュニケーション・インフラの見直し
企業においてスマートフォン/タブレット端末への投資は拡大傾向にあり、こうした中、PBXの更新期およびスマートフォン導入を契機としたUC(ユニファイド・コミュニケーション)の導入を検討する企業が増加している。多くの国内企業においてUCは、これまでIP-PBXを中心に音声とIPの統合を軸に検討されてきた。多くの企業のIT部門は、これまでオフィスフォンを検討してきた総務部門や経営企画、各業務部門と共に、将来的なワークスタイル変革を見据えながら、PBXおよびオフィスフォンの更新を機に、スマートデバイスとUCを合わせて検討すべき時期に来ているといえる。
3.企業力強化に向けたPLMシステム化構想の推進
国内製造業は、適地生産からさらに踏み込んだ適地設計を支える、グローバルの情報システムの整備を本格化させていくことが必定である。そのためには、BOM、組成/配合/レシピなどの主要データ群を中核として、引合い、見積り、受注といった初期段階から、製品のアフターサービス、コンプライアンス対応など終端に至る長大なPLMプロセスにおける一貫性の高いシステムを構築する必要がある。企業は、PLM、ERP、CRM、文書管理、プロジェクト管理、ワークフローなど複数のソリューションから最適なシステム化の構想を推進する準備を急ぎ整える必要がある。
出典:ITR