運用コストの節減へ向けて、ITマネジメント、ITアーキテクチャ、ITサービスレベル、ITスタッフに関わる多様な施策が考えられる。本稿では、計34個の施策案について実施率と節減効果を調査した結果を示し、企業が注力すべき施策について見解を述べる。
節減効果についての調査
運用コストの節減計画を立案するうえでは、幅広く網羅的に施策を抽出し、ROI評価に基づいて優先付けすることが推奨される。これには、あらかじめ施策ごとの有効性について仮説を立てておくことが望ましい。しかし、コスト削減効果は、実施しなければ結果が見えないことも多く、期待外れに終わる場合もあれば、予想以上の効果が得られる場合もある。そのため、実際に着手した企業による施策の有効性評価は、有用なインプットとなる。
こうした考えの下、ITRでは、2013年5月に「運用コストの削減施策に関する調査」を実施し、従業員1,000名以上の企業の情報システム部門、経営企画部門に所属し、IT戦略・計画の策定に関与する回答者200名から有効回答を得た。コスト削減への関心度は一様に高く、93%の回答者が「喫緊、あるいは中長期的な課題となっている」としている。
本稿で示す調査結果の見方について、簡単に触れておこう。調査では、34個の施策案についての実施状況を尋ねており、「実施したことがある」との回答率を横軸の「実施率」にプロットした。次に、実施したことがある企業による削減効果への評価を「効果は大きい(3ポイント)」「効果は中庸(2ポイント)」「効果は小さい(1ポイント)」「効果はない(0ポイント)」として、効果の平均指数を算出し、縦軸にプロットした(「不明」は母数から除外)。効果指数が高い施策は、推進・強化の対象となり得る。その中でも、実施率が低い施策は、優先的に計画化を検討すべきであろう。削減効果が低いものは、省力化や中止を検討すべきであり、特に実施率が低い施策は慎重な可否判断を要する。ただし、これには難易度の高さや検証時間の長さが低評価につながっている可能性があるため、必ずしも軽視すべきではない。