運用コストの低減を見据えてコスト節減計画を描くには、その予算化に至る過程で段階的に検討・検証を進めることが求められる。後編では、合理的なコスト節減を導くための、現状把握フェーズから実行フェーズに至るステップについて論じる。
コスト節減の推進にまつわる課題
ほとんどの企業では、運用コストの肥大化を問題視し、何らかのコスト節減施策を講じている。これには、ITアーキテクチャの変更、サービスレベルの調整、あるいはITスタッフの最適化といった特定分野の施策から、集中購買や値引き交渉などの普遍的なITマネジメントの施策に至るまで、多岐に及ぶ。これらの施策をいかに取捨選択し、合理的な節減目標を設定するかが重要であると前編で述べた(ITR Review 2013年6月号「運用コストの節減(前編)」#R-213061)。後編となる今回は、視野をコスト節減のプロセス全体に広げ、あるべきステップについて論じることとする。
コスト節減を推進するうえで、企業の多くではシナリオに沿って体系立って取り組んでいるとは言い難い状況にある。よく見られるのは、特定の施策(サーバ統合、保守契約の見直しなど)だけに着目し、網羅的な仮説検証が行われないケースである。コストを削減しようとする対象領域については、関与者のほとんどが独自の意見を持っているが、それは各人で異なり、必ずしも共通認識にならない。削減効果を最大化するためにはIT企画、主要アプリケーション、インフラなどの担当者から多様な意見を吸い上げて、評価することが望ましい。また、経営戦略から各部の節減目標が割り当てられ、それを満たすことが目的となって検討を開始する例が少なくない。この時、目標額は往々にして設定根拠に欠け、十分な検証時間を確保できないことも多い。妥当な目標値に収斂させるためには、実現可能性や目標値の妥当性検証を別途行わねばならない。
このような断片的、あるいは場あたり的な検討・評価を回避して、合理性の高い節減計画を描くことがIT部門には要求される。それには、段階的にステップを踏むことで、根拠に裏打ちされた計画の立案が求められる。