2008年のリーマンショック以降、ユーザー企業各社ではSIベンダー企業への開発や保守運用に関する発注内容や金額の見直しを続けており、IT予算執行の効率化が進められている。しかし、SIベンダーとの契約内容においては自社に不利な条件になっていることに気づいていないユーザー企業も少なくない。本稿では、特に損害賠償責任に関する条項について述べる。
SI契約は対等か
図1から図3はITRが2013年3月にユーザー企業200社を対象にSI契約に関して実施したアンケートの回答集計結果である。図1を見ると、契約内容が自社に有利な内容になっていると回答した企業は21.5%、ベンダーに有利が20.5%とほぼ同率である。しかし、従業員規模別での結果を見ると、5,000~9,999人の企業では自社に有利が15.2%に対してベンダーに有利が33.3%となり、1万人以上の企業では自社に有利が27.5%、ベンダーに有利が11.5%と比率が逆転していることがわかった。これは、ユーザー企業とベンダー企業の力関係によるものともいえるが、SI契約に対する社内の体制にも差があると考えられる。ITRが2008年に実施したアンケート調査で、1万人以上の企業の38.5%ではSI専用の調達規定が存在し、80.8%は自社版の契約書ひな型を保有、11.5%は毎回自社版のひな型を使用していることがわかっている。
出典:ITR(2013年3月調査)
また、図1の結果の「ほぼ対等であると思う」と「ほぼ対等であると思うが、よくわからない」をあわせると、半数以上の企業が「ほぼ対等」と考えていた。「ほぼ対等であると思う」は契約書の内容をある程度確認し、「ほぼ対等であると思うが、よくわからない」は十分な確認が行われていないものと思われる。しかし、ITRがユーザー企業の契約書の精査を実施した経験では、「ほぼ対等であると思う」企業であっても自社に不利な内容になっていることに気づいていないケースも散見される。