2012年9月に尖閣諸島をめぐって中国国内複数ヵ所で大きなデモや暴動が発生し、日本企業の中国でのビジネスの将来を危ぶむ声が聞かれた。しかし、日本ではオフショア開発が年々増加してきており、その相手国の約8割は中国である。本稿では、日中関係の影響と中国SIerの今後、日本のSIerの中国での活動の今後について述べる。
反日暴動の衝撃
中国に生産法人、販売法人を持つ多数の日本の企業にとって、2012年9月に始まった中国における反日デモや暴動の衝撃は大きかった。国内市場の閉塞感が高まる中、中国その他の新興市場への期待が大きく膨らみつつあっただけに、海外戦略の見直しを迫られた企業も多いだろう。しかし、中国の人件費は上昇が続いているとはいえ日本よりも大幅に安く、2013年3月に開催される第12期全国人民代表大会後の新体制によって対日政策が改善されることも期待されている。システム開発などの情報サービスに関しては社会現象の影響が表面化するのが6ヵ月程度遅れるといわれているが、現時点では中国オフショア開発などへの大きな影響は出ていないと見られる。
出典:IPA「IT人材白書 2012」のデータを基にITRが作成
暴動発生前のデータであるが、中国政府機関である工業和信息化部が発表した2012年上期の統計によると、中国の情報サービス関連の市場規模は前年同期比で26.2%増加して、1兆988億元(約14兆円)という規模に急成長している。その中でも、データ処理や運用サービスは37.1%の増加を示し、オフショア開発だけではなく、サービス事業も拡大してきていることがわかる。また、IPA(情報処理推進機構)の調査によると、日本からのオフショア開発相手国は、ベトナムが伸びている影響で、中国の比率はやや低下しているが、いまだに78.1%という高い値を示している(図1)。