IoTを取り巻く市場トレンドはどのようなものか
IoTシステムではどのような技術が採用されているのか
技術活用における課題と留意点は何か
産業界におけるデジタルシフトが進み、IoTシステムを介したデータ分析・活用のニーズが増している。本稿では、IoTを取り巻く市場トレンドを整理し、IoT導入プロジェクトを推進するうえで考慮すべき技術活用に関わる課題と留意点について考察する。
構成
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IoTを取り巻く市場トレンド
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IoTシステムにおけるテクノロジ採用動向
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技術活用における課題と留意点
- 結論
「デジタル」の意義
現在、第4次産業革命の時代にあり、デジタル社会への移行が進んでいる。多くの企業が、デジタル技術を活用した競争優位性の確立へ向けて、DXを推進している。本稿のテーマであるIoTも代表的なデジタル技術のひとつであり、その導入や活用は企業におけるDXの取り組みの一環として位置づけることができる。では、そもそもデジタル技術を採用することの意味とは何であろうか。他の技術と何が異なり、いかなる効果を期待できるのだろうか。まずは、企業のビジネス活動における「デジタル」の意義について確認しておきたい。
デジタル技術の本質的な意味合いを、CPS(サイバーフィジカルシステム)のコンセプトに倣って見てみよう。物理世界にはさまざまなモノが存在するが、デジタル技術を駆使することでさまざまな情報や示唆を得ることができる。ヒト、スマートフォン、自動車、産業機器などのデータソースからデータを収集し、仮想世界で解析する。そこから得られた洞察(インサイト)を物理世界に還流させて、有益な情報を活用したり、モノを直接制御したりすることで新たな価値を創出する。例えば、自動車の走行中にセンサーで捉えた前方車両を認識し、距離と加速度をリアルタイムに解析し、閾値を下回ると制御系に働きかけて自動ブレーキを発動する。こうして、ヒューマンエラーのない迅速な判断による高い安全性確保を実現する。デジタル技術の活用は、社会生活やビジネス現場のあらゆる場面でそのような新たな価値を産み出すことにつながる。