把握すべき社会・産業のデジタル化の潮流とは
推進すべきビジネスドライバにはどのようなものがあるか
テクニカルドライバをどのように見極めるか
デジタル化が進展するなか、不可逆的なディスラプションがすでに進行している。企業は旧来のサクセストラップに陥ることなく、社会・産業のデジタル化に対応していかねばならない。DXで先行する企業のシステム化を参考としつつ、これまで不十分であったビジネスドライバの推進に向けて、エンタープライズシステムの脱構築に向けて準備を整えていくべきである。
構成
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見落としてはならない潮流
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推進すべきビジネスドライバ
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テクニカルドライバの見極め
- 結論
デジタル社会の到来
デジタル技術によるディスラプションの影響は、すでにいくつかの産業構造を塗り替えつつあり、デジタル社会は現実に進展している。
航空機エンジンの販売から、航空距離やエンジンの稼働時間に応じて課金するサービスに転換した航空・宇宙産業はよく知られている。そして、自動車産業は、「自動車の製造・販売」から「モビリティサービス」への転換にまさに直面している。3Dプリンティングは、補聴器や義歯・歯型などで、個々人の体型・寸法・造形に応じたマスカスタマイゼーションを市井の病院でも提供できる価格になりつつある。一方、規模の経済の象徴でもあった大企業が、スピード減資で中小企業となり税制優遇を活用する事象も見られる。こうした環境変化のスピードは、今後さらに増していくだろう。
政策面では、デジタル社会形成基本法案が2021年2月9日に閣議決定され、同年9月1日にはデジタル庁が発足する予定である。デジタル庁は、省庁縦割りのシステムやアナログ業務をなくしつつ行政サービスの向上を図っていく。また、所得・税の可視化で生活保護などの公正な給付とともに、コロナ禍のようなパンデミックでも諸外国並みに迅速な給付の実現を目指している。すでに、インボイス制度の導入も決定しており、法人・個人・個人事業主の所得・税務は一気にデジタル化されていく。
これからは、かつての成功体験、例えば大量生産の計画主導型マネジメントだけに固執し環境変化に対応できないといった、サクセストラップや能力の罠(Competency Gap)に陥りかねないことを認識すべきである。