現代型エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)はなぜ必要か
モデルベース・マイクロサービス・アーキテクチャ(MMA)とは何か
MMAはどのように進めて、どのような成果をもたらすのか
DXに取り組む企業が増えているが、多くはリーンスタートアップ手法を採用し、ビジネスプロセスやアプリケーションに対するアーキテクチャを持たない。そのため対症療法的に各種テクニックを活用し、現場がカオス状態であることが多く、今後大きな問題が発生する可能性が高い。これを打破するために、従来型エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)を大幅に改良した、モデルベース・マイクロサービス・アーキテクチャ(MMA)を提唱する。
構成
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現代型EAの必要性
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MMAとは何か
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MMAの推進方法とその成果
- 結論
DX推進企業によく見られる姿
企業のDXの取り組みが活発化している。ITRが2020年8〜9月に実施した『IT投資動向調査2021』では、6割の企業はDXが重要であるとし、また約2割がDXを推進する専任組織を設置していることがわかった。さらに、同年11月の調査でDXの目的を問うたところ、最も多くの企業があげたのは「業務変革」であり、次いで「新ビジネス創成」であった。既存のビジネスプロセスを根本から見直す業務変革や、新しい事業を考案するようなDXプロジェクトにおいては、事前に要件を明確化せず、メンバー間でさまざまなアイデアを持ち寄り、デザイン思考などの手法によって取捨選択や練り上げが行われる。そしてその後に、プロトタイプ・アプリケーションを作成し、実際に利用して検証を行い、アイデアをさらに練り上げていくプロセス、いわゆる「リーンスタートアップ手法」が採用されることが多い。
ビジネス要件やシステム要求が不明確な段階でアプリケーションの構築/修正を繰り返し行う必要があることから、このようなプロジェクトではアジャイル開発やDevOpsが積極的に活用される。しかし、ビジネスおよびアプリケーションの開発や構築後の維持(運用/保守)に関する方法論や進め方のガイドラインがないことが多い。特にDXプロジェクトでは、スピードとアジリティが最優先されることから、企業によってはこのようなプロジェクトにおいてルールやガイドラインを設けること自体を悪とする風潮もある。しかし、プロジェクトの現場は、各メンバーの自律的行動のみで支えられ、「カオス」状態に陥りがちである。そのような状態がずっと続けば全メンバーが疲弊し、良い成果が得られないことは論を俟たない。