デジタルシフトが求められる背景は何か
脱構築でどう設計指針を問い直すべきか
どのように脱構築を進めていくべきか
コロナ禍への緊急対応を通じて、企業はこれまでの常識や経営モデルそのものを大きく転換するとともに、危機下における組織的な対応力を強化する必要性を実感している。こうした時代においては、現状を踏襲し再現する後ろ向きなシステム刷新ではなく、前例にとらわれずに新たなコンセプトで脱構築することにより、デジタルシフトを推進するために設計思想を明確化していくべきである。
構成
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デジタルシフトが求められる背景
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脱構築で重視すべきコンセプト
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どのように脱構築を進めていくべきか
- 結論
社会・産業のスマート化
デジタル社会へのシフトが、コロナ禍を契機に加速している。史上初の緊急事態措置が宣言された2020年4月7日以降、企業は在宅勤務やリモートワークなど非対面・非接触のデジタル空間に否応なく適応せざるを得なかった。まさしく、日本政府が主唱する超スマート社会におけるCPS(Cyber Physical System)が目指す、サイバーのデジタル空間とフィジカル空間が融合する世界観への適応であったともいえる。多くのビジネスパーソンは、想定されていたよりも5年早く、つまり60ヵ月程度飛び越えてCPSを実感することになったのである。
CPSは、デジタル空間とフィジカル空間から構成されるが、ここではデジタル空間を経営・社会基盤を支えるサイバーシステム群と、それらにコンピューティングリソースを提供するサイバーインフラ群に分けて見てみよう。フィジカル空間のシステム群も、CPSの発祥であるサイバネティクス研究をベースにデバイスや制御装置と人間の作業を含めて捉えたシステムとしている(ITR Insight 2019年夏号「エンタープライズシステムのAI動向」 #I-319071)。CPSは、IoT・エッジコンピューティングやアナログ/デジタル変換されたデータなど、現実世界に偏在する膨大なデータをデジタルのサイバー空間で処理・分析した結果をフィードバックすることで、よりインテリジェントなサービスを提供し、業務オペレーションやシステムのコントロールを自動化していく。
デジタル時代に競合に対して優位に立てるのは、最新のクラウド、AI、IoTといったテクノロジを組み合わせ、そこから得られるデータをビジネスの原材料として活用できる企業であり、資産として蓄積できる企業であろう。