デジタル化の進展は、これからの仕事や組織にどのような影響を与えるか
デジタル時代の知的労働者には、どのようなマインドチェンジが必要になるか
働き手ならびにIT部門が取り組むべきことは何か
デジタルテクノロジを活用して働き方の「手段」は多様化しつつあるが、これからの時代に「どのような意識で働けばよいか」という議論は十分になされていないように思われる。本稿では、これからのデジタル時代において、働き手に特に求められるであろう資質を取り上げ、「働き方改革」から一歩進んだ「意識改革」のあり方について論考する。
構成
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デジタル化と働き方の変化
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意識改革のアプローチ
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デジタル時代における情報の位置づけ
- 結論
「働き方改革」の先に重視されるべき視点
近年、国内企業にとって「働き方改革」は重要テーマのひとつとなっている。実際に、 企業における制度面での整備は着実に進んでおり、調査結果からもその様子は見て取れる。
ITRが2019年7月に、3万人以上の調査パネルユーザーを対象に実施したアンケート調査によれば、勤務先において「働き方改革が経営目標として掲げられている」とした人の割合は32%(前年調査から2ポイント増)、「テレワーク制度が導入されている」とした人の割合は20%(同4ポイント増)、「時短勤務制度を導入済み」とした人の割合は44%(同4ポイント増)に上った。また、「社員の副業が認められている」とした企業も、前年調査から2ポイント増加して2桁台の11%となった。これらの数値は、近年一貫して上昇傾向にある。
一方、働き方の多様化を後押しするためのテクノロジの導入も進んでおり、スマートフォンなどのモバイルデバイスの支給・貸与、Web会議システムなどのコミュニケーション・ツールの導入、就業管理システムの導入、業務の自動化を支援するRPAの導入といった施策も右肩上がりで進展している。
しかしながら、上述したような制度やツールの整備は、主として働く「手段の変革」に関わる施策である。働き方の多様化が叫ばれるなかにあって、個々の働き手が「どのような意識をもって働くべきか」「何を目指すべきか」といった、内面に踏み込んだ議論は十分になされていないように見受けられる。働く環境が多様化すれば、そのなかで成果を出すために、人の意識や行動にも変革が必要になるであろう。本稿では、今後重視されると見られる働く人の意識の持ち方や考え方について考えてみたい。