AI技術を利用したソフトウェア開発を取り巻く状況はどのようなものか
AI技術を利用したソフトウェア開発契約で押さえておくべき特性は何か
AI技術を利用したソフトウェア開発において交渉すべき要点は何か
AI技術を利用したサービスに対する導入意欲が高まっている。一方で、AI技術の特性や開発の特徴についてはあまり理解されていない。本稿では、従来型ソフトウェア開発とAI技術を利用したソフトウェア開発の相違点を確認するとともに、契約交渉にあたり重要となるポイントについて論じる。
構成
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AI技術を利用したソフトウェア開発を取り巻く状況
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契約上の特性
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交渉すべき権利の帰属と利用条件
国内企業におけるAI技術の新規導入可能性
出典:ITR「IT投資動向調査2019」
国内企業においては、AI技術への高い投資意欲が継続している。ITRでは2018年8~9月に実施したIT投資動向調査のなかで、製品・サービス分野への投資意欲を調査した。「AI/機械学習」と「ディープラーニング」に対する2019年度の投資意欲を見ると、OS/ミドルウェア分野28項目中、投資増減指数(導入済み企業における投資額の増加意欲)と新規導入可能性(未導入企業の新規導入意欲)ともに高いスコアを記録した。特に、新規導入可能性では全115の調査項目中で「AI/機械学習」が最上位となり、「ディープラーニング」も3位となっていることから、多くの企業が新規にAI技術の導入に向けた活動を開始すると見られる。また、業種別にOS/ミドルウェア分野を確認すると、製造業と建設・不動産業において「ディープラーニング」が新規導入可能性でトップとなった。
このように企業ではAI技術への投資に積極的な姿勢を示しているものの、AI技術を活用したソフトウェア開発やサービスの契約の実務においては、ほとんどのユーザー(本稿ではユーザー企業の意味で用いる)が知見を持っていないとITRでは見ている。これまではIT契約の締結には、そのプロジェクトを牽引するIT部門やビジネス部門と法務部門から、契約について経験を有した複数の担当者が協業して対応を進めるケースが通常であった。しかし、AI利用に関するプロジェクトではそもそも経験者がいないことがほとんどであるため、場合によってはベンダーから情報を聞き出しながら交渉を始めるようなケースもあろう。