ポスト2020へのインパクトとは何か
どのような近未来仮説が導き出されるか
基幹システムの将来像をどう描いていくべきか
多くのものづくり企業は、ポスト2020を想定したマイルストーンで、基幹システム刷新の方向性を検討し始めている。あらゆる業務でデジタライゼーションが進展していくなか、そのインパクトをどう切り分け、どう活用していくのか、そのうえで、どのようなシステム構想を描いていくかが、今後10年を左右する大きな分かれ目となるだろう。基幹システムの近未来の仮説に基づく将来像を具体化しつつ、ものづくり企業が進むべき道程や選ぶべき選択肢を明らかにする。
構成
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ポスト2020へのインパクトとは何か
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どのような近未来仮説が導き出されるか
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基幹システムの将来像をどう描いていくべきか
- 結論
10のキーテクノロジ
はじめに、2020年以降、インパクトが大きいテクノロジを確認してみよう。基幹システムの将来像の検討にあたっては、ビジネスドライバとテクニカルドライバの双方を見据えつつ、自社システムのコンセプトを明確化していくことが重要だからである(ITR Insight 2012年春号「重要性を増すビジネス・アーキテクト」 #I-312041)。
クラウドは、コスト削減目的から、企業および産業を横断するシステムのプラットフォームとして重視されるようになっていくだろう。AI/ロボットが、人間の思考や経験を置き換えるのは時期尚早であるが、知覚・認識・解析能力が向上し普及するなかで、あらゆるシステムに組み込まれていくだろう。IoTは、5Gネットワークの高速・低遅延・大容量といった特性と相乗効果の高いテクノロジであり、5G無線基地局などのインフラ投資コスト負担といった課題が解消されれば、IoT利用の裾野はより広がっていく。ブロックチェーンは、トレーサビリティ、国際貿易といった企業横断のプラットフォームで実用化が進み、すでに3Dバイオプリンティングで代替臓器を供給するシステムに活用する事例も見られる。IoTから付加製造技術の4つのテクノロジは相乗・補完的な関係にあるといえるだろう。
また、MIと略称されるマテリアルズ・インフォマティクスで、眠っていたデータ、見過ごしていたデータを素材研究に活かせるようになってきている。そして、VR/AR/MRは、ニューロテクノロジの進展に伴いあらゆるシステムのユーザーインタフェースを向上させる。新たなコンピューティング技術により、これまでの限界がブレイクスルーできる用途が見い出せるようにもなっていくだろう。