柔軟な働き方が拡大するなかで、企業が直面する課題は何か
組織文化とはどのようなもので、なぜ重要なのか
組織文化の共有を実現する手段にはどのようなものがあるのか
働き方改革が進むなかで、従業員の就業形態は今後ますます多様化すると見られる。そうしたなかで、組織に対する帰属意識や共通前提が失われるのではないかと危惧する意見は少なくない。本稿では、時間と場所の共有が希薄になりがちなこれからの働き方の中で、組織運営の重要なカギを握る「文化」に着目し、その共有を実現するための手段を考察する。
構成
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働き方の変化がもたらす課題
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組織文化の重要性
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組織文化の共有方法
- 結論
拡大する「柔軟な働き方」
出典:ITR(2017年7月調査)
労働人口の減少や高齢化の進展、国の主要政策として位置づけられたことなどを受けて、「働き方改革」が近年の主要な経営課題と認識されるようになったことは周知のとおりである。ITRの調査結果でも、実際に働き方やワークスタイルの変革に取り組む企業の割合は着実に増加している。ITRでは、国内企業に従事する者2万5,000人以上を対象に、勤務先企業におけるワークスタイル変革の取り組み状況を定点観測している。直近の2017年7月に実施したアンケート調査では、国内企業における主要な取り組みの実施状況は上図のような結果となった。
例えば、ワークスタイル変革を経営目標に掲げている企業は4分の1を超えており、テレワーク制度を正式に採用する企業の割合も10%を超えた。社員の副業を認めている企業の割合も、まだ少数ではあるものの7%に上った。これら3つの取り組みの実施率は、前年調査からいずれも約2〜3ポイントずつ上昇しており、今後に向けてもさらに伸びることが見込まれる。
一方、在宅勤務制度、時短勤務制度、フレックスタイム制度の採用率は、前年調査とほぼ同等の水準となったが、いずれの制度も、特に大企業の間では当たり前の制度として定着しているといっても過言ではない。2018年6月にも関連法案の国会成立が見込まれるなか、こうした動きはより広範囲に広がることが予想される。
今日における「働き方改革」の取り組みは、局所的な改善活動にとどまらず、組織の就業制度そのものを大きく転換しようとしている。