ITが備える本質的な特性とは何か
加速するITの進化は、産業界にいかなる影響を及ぼすのか
長期的な視座から、ITビジネスが向かう先には何があるのか
ITの指数関数的な進化が業務の自動化を加速させることで、今後のITビジネスにおける需要構造や雇用機会は大きく変化する。こうした環境の下、IT市場のプレーヤーが将来の事業機会をいかに推し量ってアプローチをしていくべきか、そのヒントを探る。
構成
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IT産業の本質とは
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加速するITの進化が市場もたらすもの
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IT市場の将来へ向けたアプローチ
- 結論
ITとは「仮想化」
ITは連綿と進化を続けている。矢継ぎ早に新技術はリリースされ、既成概念を覆す新興ベンダーが台頭し、市場構図は絶え間なく変化している。IT産業が将来どうなっていくのかは、ITを生業とするベンダーはもちろん、受益者であるユーザー企業にとっても関心事である。しかし、未来のビジョンや市場構図を信憑性のある形で描くのは、ことさらIT業界においては難しい。リサーチ・ファームやシンクタンクが将来予測を行う際、積み上げた実績データによる線形予測が用いられる。この手法は、ERP製品など特定の市場セグメントの短中期的な予測において有効であるが、顕在化したファクトデータを依り所とするため、時間軸も分類軸も近視眼的なものとなり、俯瞰的な分析には向かない。
より有益な未来予想は、IT市場に閉じた視点ではなく、経済や産業といったマクロ視点での議論の中に見い出せると思われる。時代を変えるメガトレンドの過去と現在を捉えることで、初めて20年先、30年先を予想でき、近未来にIT業界が向かうべき現実感のある道筋が見えてくるのではないだろうか。
本稿は、このような長期的トレンドに基づく未来予想、ないしはその評価材料を導くことを主眼とする。産業界に影響を及ぼすITの進化レベルを読み解き、未来の考察に帰着したい。それには、ITの遺伝子に脈々と流れる「本質」を知らなければならない。
まず、「ITとは何か」との命題に対峙することから始めよう。ITとは「現実社会における情報処理を電子化(ビット化)することで、仮想的に実行させる技術」である。