なぜプロジェクトの成功は難しいのか
BABOKにおける要求開発の勘所は何か
ユーザー企業はBABOKをどのように活用すれば良いのか
プロジェクトの成否の判断は、プロジェクトの目的を達成できたか否かで行われなければならない。また、計画された予算と期間内で完了し、期待された品質を実現する必要もある。しかし、いずれも満たせないプロジェクトは少なくない。それを解決するノウハウ集のひとつとして上流/超上流工程におけるBABOKが知られているが、活用にまで至っていないのが実情である。本稿では、ユーザー企業におけるBABOKの有効な活用方法について述べる。
構成
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困難な要求開発
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BABOKの概要
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BABOKの主要ノウハウ
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BABOKの活用方法
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CBAPとCCBA
- 結論
問題プロジェクトの原因発生工程
出典:IPA「ソフトウェア産業の実態把握に関する調査報告書」
リーマンショックの大きな波も収まり、企業でのIT投資が回復しつつあるが、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の毎年の調査では、ITプロジェクトに関してQ(品質:Quality)C(予算:Cost)D(開発期間:Delivery)のいずれにおいても、実績が計画どおりとなっていない企業が圧倒的に多い。
例えば同協会が発行した「企業IT動向調査 2012」によると、100~500人月規模のプロジェクトでは、計画期間内に開発が完了したプロジェクトは20.5%しかなく、42.8%でやや遅延、36.7%で明らかな遅延を起こしている(N=346)。予算については、22.9%は予算内で完了しているが、半数近い46.2%でやや超過、30.9%で明らかな超過となっている(N=353)。また、品質は12.5%で満足であったが、63.9%でやや満足、23.6%で不満となっている(N=352)。
なぜこのような問題を引き起こしているのか、上図からその原因を推察することができる。上図は2012年8月にIPA(情報処理推進機構)が発行した「ソフトウェア産業の実態把握に関する調査報告書」に掲載された開発プロジェクトのQCD達成状況で未達成の工程の理由を1番から3番まで問うた結果である。どの工程で問題の原因が発生したかを見ると、問題を引き起こす原因は、圧倒的に「業務・システム要求定義工程における問題」に集中していることが示されている。