人とAIが協働する営業組織とは、営業担当者をAIで代替することを意味しない。SFAを、顧客・商談・活動情報の営業・AI協働基盤として再定義し、AIエージェントを利用して情報収集、商談準備、記録、案件レビューを支援・一部実行することにより、人が顧客理解、提案戦略、交渉、関係構築に集中する、という営業変革を指す。本稿では、営業変革に向けた人とAIの役割分担、およびデータと統制設計について解説する。
営業・AI協働基盤へと進化するSFA
従来のSFAは、案件、活動、予実を記録・可視化する仕組みとして導入されてきた。しかし実際は、営業担当者に入力の負担を強いる一方で、活用は営業会議向けの報告ツールにとどまり、期待した効果が得られていないと感じる企業も少なくなかった。また、案件情報の鮮度が低かったり、記載事項が標準化されていなかったりする企業では、営業マネージャーは案件や売上げの予測・分析に着手する前に、SFAに入力された情報の確認と補正に多くの時間を割かざるを得なかった。
生成AIとAIエージェントの普及を受けて、SFAの役割は変化し始めている。今後のSFAは、営業情報を保管するデータベースではなく、AIが顧客文脈を参照し、営業担当者の最終判断の下で営業活動を支援・実行する協働基盤へと進化していくとみられる。AIセールスエージェントは、顧客情報と案件・活動履歴だけでなく、メール、会議記録、提案書、見積書、契約情報、商品の利用情報などを横断的に参照し、顧客企業や業界の動向リサーチ、資料作成といった商談準備や次回アクションの提案など、営業活動を支援する。
Salesforce社の「Agentforce Sales(旧Sales Cloud)」では、営業担当者の日常業務において、メール文案や見積書の作成、通話の要約、活動記録などを支援するAIセールスエージェントを提供している。Microsoft社も、Dynamics 365 SalesとMicrosoft 365上の営業情報を横断して検索・要約・アクションを行う「Sales agent」を提供している。両社の動向に示されるように、SFAは営業プロセスの記録基盤から、人とAIの協働基盤へと移行しつつあるとみている(図1)。
出典:ITR