人事システムは、いま大きな変化にさらされている。エンタープライズアプリケーションの主要4業務においてSaaS化が最も進展し、人的資本経営に代表される人材投資や働き方改革への取り組みが投資家からも注目されるようになっている。人事部門が、従来のクローズドで裏方的な存在から戦略人事の担い手へと変革を目指すにあたり、AI技術およびエージェンティックな人事システムは、分散した人材情報の活用と意思決定を支援する有力な手段となり得る。
エンタープライズアプリケーションにおけるSaaSの推移と人事システム
ITRが2008年以降毎年実施しているERP市場の最新の市場調査『ITR Market View:ERP市場2026』によれば、基幹系システムとも呼ばれるエンタープライズアプリケーションの主要4業務において、人事・給与は最もSaaSが進展している(図1)。
出典:ITR『ITR Market View:ERP市場2026』
人事システムは、給与計算に代表されるように、最も早くからシステム化が進められてきたが、現在(2025年度予測)では新規ライセンスの売上げのほぼ8割をSaaSが占めている。また、昨今では勤怠管理、労務管理、およびタレントマネジメントとして知られる人材管理などは、それぞれ自社に適する製品を組み合わせて利用することも一般的になっている。また、採用に関しては、外部のリクルーティングサービスを用途に応じて複数利用したり、人材データの分析などでも専門サービスを利用したりするようになってきている。
つまり、人事システムは、まだレガシーが残る場合も含めれば、オンプレミス、SaaS、外部サービスなどが混在する環境になってきているといえる。さらに、給与計算については、BPO利用も徐々にではあるが増えてきており、これらBPOプロバイダーが勤怠管理や労務管理をiPaaSで連携させ、企業が自由に選択できるようになってきている。人事システムは、単一のシステムで全てのデータを統合するシステム方式から、大きく変化しつつあるといえる。