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ITR Review

コンテンツ番号:
R-226084
発刊日:
2026年8月18日

フィジカルAIの実装を支えるIT部門の役割

現場データ基盤の整備とIT/OTコンバージェンス

著者名:
三浦 竜樹
フィジカルAIの実装を支えるIT部門の役割のロゴ画像

フィジカルAIとは何か

フィジカルAIへの関心が、日本市場でも高まりつつある。2026年7月16日、NVIDIA社のCEOであるジェンスン・フアン氏は、富士通の記者説明会に登壇し、フィジカルAI分野における富士通をはじめとする複数の日本企業との協業や提供強化を発表した。また、富士通は、ファナック、安川電機、川崎重工業とともに、NVIDIA社の技術を活用したフィジカルAIの社会実装に向けた事業検討を開始すると発表した。製造、物流、ヘルスケアなどの分野で、人とロボットが共存・協働する社会の実現を目指す取り組みであり、国内企業によるフィジカルAIの社会実装に向けた検討が具体化した一例である。

フィジカルAIは、まだ単一かつ明確な定義が確立されていないが、AIがセンサーやIoT機器から得られる現実空間のデータを基に状況を理解し、ロボット、搬送機、工作機械、建機、ドローン、医療機器などを通じて物理的な処理を実行する仕組みといえよう。従来のロボット制御は、あらかじめ定められた動作を高精度に繰り返すことを主な目的としているのに対し、フィジカルAIを組み込んだシステムでは、環境の変化や作業条件の違いを認識して、より柔軟に判断することが期待される。

また、単独の技術・製品・サービスで実現されるものではなく、複数の技術要素が連携することで実行されるものである。入力情報となるのは、カメラから取得する映像、LiDARから取得する距離・3次元点群データ、振動センサーから取得する振動波形、マイクから取得する音・異音データ、電流センサーから取得する消費電流・負荷データ、温度センサーから取得する温度データ、GPSやビーコンなどの測位デバイスから取得する位置情報などがあげられる。現場データは、IoT基盤で収集し、遅延、可用性、機密性などの要件に応じて、エッジ、オンプレミス、クラウドに処理を配置する。デジタルツインやシミュレーションは、必要に応じて導入前検証や学習データの生成に用いる。図1は、その代表的な構成例を示したものである。

図1.フィジカルAIを支える技術構成の概念図

図1.フィジカルAIを支える技術構成の概念図
出典:ITR

現場で動くAIには低遅延性と可用性が求められる。全ての判断をクラウドに依存すると、通信遅延や通信断が発生した際に、停止判断や安全制御が遅れる可能性がある。そのため、どの処理をエッジで行い、どの処理をクラウドで行うかを設計する必要がある。

また、デジタルツインは、実機投入前の検証や異常シナリオの再現、ロボット動作の学習、レイアウト変更時の影響評価などに用いられる。フィジカルAIの導入では、実空間での試行リスクを下げるため、仮想検証基盤の重要性は高くなる。

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