産業界の市場構図や技術トレンドの変遷が著しい今日、ビジネスに影響を及ぼす環境変化を的確に捉えるマーケットインテリジェンスは、企業経営において重要な意味をもつ。企業は、必要なタイミングで迅速にビジネス戦略をアップデートできるよう、あらかじめリサーチドメインを定義し、マーケットインテリジェンスのための体制を確保すべきである。
求められるマーケットインテリジェンス
近年、企業を取り巻く経営環境の変化は激しさを増しており、主要国の政策、為替や株価、産業界の法制化から技術トレンドに至るまで、極めて速いスピードで変化している。生成AIの技術動向を見ても、数ヵ月前の常識が通用しなくなることも珍しくない。環境変化をいかに先読みし、評価して追随するかは、現代の企業が具備すべき必須の組織能力である。マーケットインテリジェンスのための組織体制を整備し、機能強化を図ることは、その重要な一手となる。
マーケットインテリジェンスとは、企業戦略の意思決定を支援するために、ビジネスに影響を与える情報やデータを集約・分析し、適切かつタイムリーに報告する活動(あるいはその情報)を指す。経営判断を要する重要なイシューの抽出と報告を行うことから、経営企画部門や事業統括組織がその役割を担うことが多い。一方で、事業戦略や機能戦略に関わる検討に寄与する場合もあり、各部門がそれぞれの管轄分野において類似した機能を備えることも重要となる。
IT部門は、ビジネス部門やコーポレート部門に対して横断的にサービスを提供するのが通例である。今日の事業戦略や機能戦略は、ITやデジタル技術を抜きに語ることはできず、ITに関わる技術動向や市場トレンドをビジネス部門やコーポレート部門に連携し、戦略方針に関する提言を行うことの意義は大きい。特に、特定の技術トレンド(生成AIなど)については、IT部門はより正確にそのビジネスインパクトを評価できる場合があり、各部門と情報共有の機会を積極的に設けるべきである。IT部門もまた、独自にマーケットインテリジェンスを遂行し、必要に応じて各部門と協調して戦略的な検討を行う体制を構築することが望まれる。