近年、DX推進や生成AIに代表される新技術の進展などに伴い、IT部門にはビジネスの牽引が一層強く求められている。このテーマは長年にわたり提起されているが、多くのIT部門は能動的なビジネスへの関与が不足している。本稿では、改めてIT部門が企業の競争力強化に貢献するための「ビジネスへの能動的な関与」の重要性を明らかにするとともに、その実現に向けた意識改革と行動変容を提言する。
新技術の進化とビジネスへの影響
クラウドや生成AIなど、飛躍的に発展した新技術は、ビジネスの効率化、新しい製品・サービスの開発、顧客体験の革新といった、これまでにない可能性を企業にもたらしている。これらのテクノロジをいかに迅速かつ効果的に活用できるかが、企業の競争力を決定づける重要な要素となっている。技術進化のスピードは衰えることを知らず、企業は常に最新の動向を捉え、自社のビジネスへの応用を検討していく必要がある。
このような技術革新の波を受け、IT部門に期待される役割は大きく変化している。かつてはシステムの安定運用やコスト最適化が主なミッションであったIT部門は、「コストセンター」としての位置づけが強い傾向にあった。しかし、現在ではビジネス部門と緊密に連携し、デジタル技術を駆使して企業の競争力向上に直接的に貢献する「戦略的パートナー」としての役割が不可欠となっている(図1)。IT部門は単に要請に応じるだけでなく、ビジネス部門と共に将来の方向性を描き、その実現を技術面からリードすることが期待されている。
出典:ITR
市場環境が不確実で変化が激しい現代において、企業が持続的に成長し、競争力を維持するためには、変化への迅速な適応能力が求められる。この適応力を高めるうえで、IT部門はビジネスの最前線で何が起きているかを理解し、技術的な知見を活かして新たな機会の探索や潜在的な課題解決を能動的に行うことが極めて重要であり、受動的な対応ではビジネスチャンスを逃がす可能性がある。企業が生き残るためには、IT部門がビジネスの推進力となる必要がある。