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ITR Review

コンテンツ番号:
R-225011
発刊日:
2025年1月6日

AIネイティブカンパニーへの進化

2025年に注目すべきIT戦略テーマ

著者名:
金谷 敏尊
AIネイティブカンパニーへの進化のロゴ画像

2024年は、多くの企業が生成AIの社内展開を加速させ、さらなる高度活用を模索する一年となった。2025年以降も、引き続きAI技術のビジネスへの影響は大きなものとなるであろう。あらゆる企業は、企業価値向上を見据えて「AIネイティブカンパニー」への進化を遂げ、AIを活用して成果につなげることが求められている。本稿では、AI技術動向の視点を交えて、2025年に注目すべきIT戦略テーマを紹介する。

AIはどこへ向かうのか

2024年を通じて、生成AIは、IT業界の主要なトレンドとして注目され、多岐にわたるトピックを提供し続けた。それでは、2025年にはどのような動向を示すことが予想されるだろうか。図1は、ノルウェーの社会学者リスガードの「異文化適応のUカーブ理論」に照らして、生成AIのポジションをプロットしたものだ。現時点で生成AIは「ハネムーン期」を終え、「ショック期」に入りつつあるとITRではみている(ITR講演資料『生成AIといかに向き合うか』T-202411K01)。

図1.ハネムーン期の終焉を迎える生成AI

図1.ハネムーン期の終焉を迎える生成AI
出典:Lysgaard‘s (1955) U-shaped curveを基にITRが作成

同理論は、異文化適応の過程を説明する理論のひとつで、異文化の中で生活する人々が適応していく心理的な変化を、時間の経過とともに描いている。これに技術やサービスを当てはめてみると、優れた技術やサービスが台頭すると、大きな期待感とともに急速に世の中に普及するが(ハネムーン期)、一定期間を経ると初期の高揚感が失われ、ネガティブな印象がより支配的になる(ショック期)。生成AIの市場浸透は進むであろうが、一方で、問題がクローズアップされる、抵抗感が増すなど、心理的な障壁が立ちはだかると予想される。

この時、誤解してはならないのは、ショック期はあくまでも心理的な状態を指し、必ずしも市場の拡大/縮小を表すものではないという点だ。ショック期に終焉する技術もあるが、回復期に移行するものも数多く、その場合、ショック期においても市場規模は拡大し続ける。新技術は普及する過程で、早期採用者層から初期多数派に移行する時の障壁、いわゆるキャズムに直面するため、それを乗り越える技術か否かの見極めが必要である。生成AIを含むAI技術は、将来的にこのキャズムを乗り越え、さらなる飛躍を遂げる可能性がある。現在当たり前となっている有力技術には、ショック期に発生したネガティブな事象を克服してきた経緯が少なからずある。インターネットの台頭は、ドットコムバブルの崩壊を乗り越え、クラウドコンピューティングは、データを社外に置くことへの懸念を乗り越えてきた。ブロックチェーンは、幾度の資産流出を経たが、分散型金融(DeFi)の基盤技術として進化を続けている。

さて、生成AIに対する国内企業の期待は極めて高いが、ビジネス上の効果を十分に実感できている組織はまだ少数派である。(ITR Insight『生成AIの業務活用に向けた考慮点』I-324071)。ショック期の生成AIを冷静かつ慎重に評価しつつも、将来展望としてAI技術の活用による成果創出を見据えるべきである。企業は、AIをあらゆる業務活動の前提に据えて、先駆的にビジネスに活用する「AIネイティブカンパニー」に進化することが望まれる。さまざまな領域でAIを母国語のごとく使いこなす能力が備われば、ショック期の終焉時にそれは企業価値を高める大きなアドバンテージとなるであろう。

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