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ITR Review

コンテンツ番号:
R-223104
発刊日:
2023年10月1日 (予定)

アーキテクトの使命

最小セットによるシステムデザイン

著者名:
浅利 浩一
アーキテクトの使命のロゴ画像

ITR Review 2023年8月号『DX時代のエンタープライズアーキテクチャ』(#R-223085)で、アーキテクチャマネジメントの重要性について述べた。本稿では、多くの企業が目指すデータドリブンなシステムを意図しつつ、アーキテクトがどのように初期段階のデザインをしていくべきか、またサイロを含むシステムの複雑性を軽減していくべきかについて具体的に考察する。企業は、自社の業務やデータを可視化し、マネジメントすることができる体制を整える必要がある。

アーキテクチャデザインにおける鉄則

アーキテクトの使命は局面により変わるが、システム構築の最初期のデザイン段階では、組み合わせれば、全てのユースケースが満たせるようなシステム構成の最小セットを見つけ出すことである。ここでの組み合わせとは、パターンを指す。例えば、変化が見込まれる要件の主要な変動性をパターン化し、各パターンにおけるシステムの相互作用(インタラクション)や振る舞いを、変動部分と固定部分の組み合わせで見極めることである。そして、最小の意味するところは、最もシンプルであることを指す。同じアウトプットやソリューションが得られるのなら、部品にあたるシステムの構成要素の数は少ないほどよい。システム構築および運用の工数や費用が削減できることはいうまでもないが、シンプルなシステムなほどロバスト性が高い。ロバストとは頑健を意味し、外乱や誤差に左右されずに本来の性能を発揮できる性質であるが、基本的にはシンプルでフラットな特性を持つシステムほど、ロバスト性を向上させやすい(ITR Insight 2017年秋号『エンタープライズシステム総点検と未来構想』#I-317103)。

ロバスト性を表面的に見ると、変化や変動に対応できるようにあらゆるセンサーを持ち、センサーの信号を処理できる機能やフィードバックする機能が多ければ多いほど対応力が高くなるのではないかと、一見思える。しかし、あらゆる変化や変動を事前に想定して、センサー、処理機能、フィードバック機能などを開発することは、複雑性が高くなりすぎて不可能である。可能な範囲で網羅性を高めておくのが次善の策のように思えるが、どこまでの範囲で線引きするかの基準を設定するのも事実上不可能であろう。網羅性や複雑性を増す方向での検討は、中途半端な結果を招くのが通例である。

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