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ITR Review

コンテンツ番号:
R-223074
発刊日:
2023年7月1日

国内MaaSの現実解

市場分類と8つのトレンド

著者名:
金谷 敏尊
国内MaaSの現実解のロゴ画像

新たなモビリティサービスであるMaaS(Mobility as a Service)の普及が世界的に進んでいる。日本は、交通先進国といえるが、地域や目的によって事情は大きく異なる。本稿では、国内のMaaS市場を3つに分類し、その各々における課題を整理するとともに着目すべき市場トレンドを示す。

国内MaaS市場

2010年代後半からMaaSは世界各地で展開され、米国やフィンランドといった一部の国ではすでに重要な社会インフラとなっているなど、現在もその傾向は続いている。ライドシェアは、MaaSの代表的なサービスのひとつであるが、コロナ禍からの経済正常化に伴い大幅に需要が回復しており、MaaS市場の成長を後押ししている。一例をあげると、ライドシェアの大手であり先駆者である米Uber Technologies社は、2022年7~9月期に前年同期比72%増の83億4,300万ドルの売上高を達成している。

MaaSは海外のみならず、国内においても市場成長が見込まれている。しかし、国内でも海外と「同質の」市場成長を期待できると考えるのは現実的ではなく、国内のMaaSへのニーズは海外のものとは異質であると捉えたほうがよい。第一の理由は、国内ではライドシェア(有償)が事実上禁止されている点である。世界各国では、ライドシェアによる低価格化がMaaS普及のトリガーとなって需要拡大をもたらしたが、日本ではこれに代わる付加価値を訴求しなければならない。

次に、世界有数といわれる、特に首都圏における交通機関の複雑さがあげられる。上述のフィンランドでは、市民に利用されるMaaSプラットフォームの構築に向けて、政府主導の下、約100の産官学の組織が協力したことが大きな成功要因となり、移動情報の連携や事業者の統合管理を実現している。日本の複雑な交通環境においてはこれを上回る組織数が見込まれ、協力体制を構築することは極めて困難であろう。

こうした事情は、高度に公共交通システムが発達する首都圏の都心部において見られるものであるが、その一方では交通インフラの不十分な地域があり、地方には観光地もある。そのため、単一ではない複数の市場セグメントを見据えて、各々の交通事情や移動ニーズを視野に入れる必要がある。そして、個別に適したサービスを設計することが、国内MaaSには求められている。

ここでは、都市部、過疎地域、観光地に分けて国内MaaSを考察する。それぞれの主要課題を図1に整理した。これらに呼応する市場トレンドについて順に見てみよう。

図1.国内MaaS市場トレンド

図1.国内MaaS市場トレンド
出典:ITR

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