1. TOP
  2. レポート・ライブラリ
  3. アフターコロナのオフィス環境 - ABWによるワークプレイスの再設計 -


ITR Review

コンテンツ番号:
R-223061
発刊日:
2023年6月1日

アフターコロナのオフィス環境

ABWによるワークプレイスの再設計

著者名:
舘野 真人
アフターコロナのオフィス環境のロゴ画像

コロナ禍が収束へと向かうなか、従業員をオフィスに呼び戻したいと考える企業は少なくない。ただし、リモートワークを経験した従業員にとって、オフィスはリモート環境では提供できない価値を提供する場であることが求められる。本稿では、アフターコロナのオフィス環境を考えるうえで注目される「Activity Based Working(ABW)」の概念を紹介する。

ABWの概念

コロナ禍の沈静化に伴い、在宅でのリモートワークを行っていた人がオフィスワークに回帰する動きが進んでいる。ITRが毎年7月に実施している3万人以上の国内企業勤務者を対象にしたアンケート調査では、「在宅勤務を行わず、通常通り職場に出勤している」とした人の割合は、2020年が38%、2021年が40%であったのに対して、2022年は53%に上った。2023年もこの値はさらに上昇すると見込まれる。
ITRでは、今後に向けてリモートワークとオフィスワークの利点を組み合わせたハイブリッドワークが一般化すると見ているが(ITR Review 2022年11月号「求められるハイブリッドワークへの対応」#R-222115)、アフターコロナの局面において、物理的なオフィスの役割や価値に関心が集まるのは間違いないであろう。

そうしたなか、オフィス空間を設計する際の基本コンセプトとして近年注目を集めているのが「Activity Based Working(ABW)」である。ABWとは、日々の仕事を「活動(Activity)」のレベルに分解し、それぞれの特性に適した場所を選んで働くという考え方や、それを実現する職場環境を指す用語である。

ABWの概念を採用したオフィス環境は、所属部門に応じて割り振られることが多い従来型の固定席と比べると、従業員に働く場所の選択や移動の自由があるためスペースの有効利用がしやすいうえに、部門を越えたコミュニケーションの促進を図ることができる。ここまでであれば完全自由席のフリーアドレスでも実現可能だが、ABWでは、そこからもう一歩進み、集中したいとき、相談相手が欲しいとき、新しい着想を得たいとき、といったシーンごとに最適な環境を選んで働くことが提唱されている。そのため、個々の従業員にとっては日々の業務を“活動”という切り口で見直す機会となり、エンゲージメントや生産性の向上も期待できる(図1)。なお、ABWの概念をオフィスの外にまで拡張すれば、自宅や公共空間を含めて働く場所を自律的に選択するための指針として活用することも可能となる。

つまり、多様化するワークスタイルに合わせて働く環境(ワークプレイス)にも多様性を持たせ、両者を活動という切り口でつなぐことで、組織の働き方のみならず、風土や文化の変革を促すことこそが、ABWが目指す姿であるといえる。 

図1.ABWの特徴

図1.ABWの特徴
出典:ITR

ITR 著作物の引用について

ITRでは著作物の利用に関してガイドラインを設けています。 ITRの著作物を「社外利用」される場合は、一部のコンテンツを除き、事前にITRの利用許諾が必要となります。 コンテンツごとに利用条件や出典の記載方法が異なりますので、詳細および申請については『ITR著作物の引用ポリシー』をご確認ください。

TOP