国内企業の生成AIの業務利用はどの程度進んでいるのか
生成AIのビジネス適用に向けて注目すべき技術動向は何か
生成AIのビジネス適用に向けたステップはどうあるべきか
生成AIに対する国内企業の期待は極めて高いが、ビジネス上の効果を十分に実感できている組織はまだ少ない。今後に向けて生成AIの価値をより引き出すためには、基盤モデルを自社のシステムやデータと連携させて、業務に組み込むことが必要となる。本稿では、その際に推進者が考慮すべき点を解説する。
構成
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1.生成AIの利用実態
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2.生成AIの本格的なビジネス適用に向けて
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3.生成AIのビジネス実装に向けて
- 結論
1.生成AIの利用実態
1-1. 生成AIサービスの利用状況
大規模な事前学習を施した基盤モデルを活用して新たなデータを生成する「生成AI」は、創造的なタスクを自動化できる技術として注目を集めるだけでなく、すでに企業において現実的な投資対象として認知されている。
ITRが毎年実施している『IT投資動向調査』では、100を超える製品・サービス分野の投資意欲を定点観測しているが、2023年に実施した最新の調査で「生成AI」は、新規導入可能性(2024年度に新規に導入する可能性を示す指標)で2位、投資増減指数(既存ユーザーの2024年度の投資増減傾向を示す指数)で5位と、いずれも上位にランクされた。ChatGPTの登場によって一躍注目を集めてから、わずか1年足らずの時期の調査であることを考慮すれば特筆すべき結果といえる。
また、2024年1月に従業員1,000人以上の大企業に勤務するIT担当者を対象に実施した調査では、「企業として生成AIを正式に採用し、全社的ないし一部の部門で実務に利用している」とした割合は43%と半数に迫る結果となった(図1)。ちなみに、これに「試験的に利用している」(20%)、「直近(1年以内)の利用開始を検討している」(8%)、「将来に向けて(2~3年のスパンで)利用を検討している」(7%)を足し合わせると、全体の78%が生成AIを実務に活用することに前向きな姿勢を示している。