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プレスリリース

国内企業のIT予算は安定的な増加基調
ただし、情報セキュリティ、マイナンバー制度対応など守りの負担が増大
ITRが「IT投資動向調査2016」の結果を発表

株式会社アイ・ティ・アール(ITR、代表取締役 内山悟志)は本日、国内企業を対象に2015年9月に実施した国内IT投資動向調査の一部結果を発表いたします。2001年の調査開始から15回目を数える今回の調査では、有効回答数を2,400件超へと大幅に拡大するとともに、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向、重視するIT戦略などに加えて、全100項目におよぶ製品・サービス分野の投資意欲を調査しました。

安定的な成長を見せたIT予算

2015年度(2015年4月~2016年3月)のIT予算は、増額(「20%以上の増加」と「20%未満の増加」の合計)と回答した企業の割合が21.3%となり、前年調査における2014年度の値(23.1%)を若干下回りました。ただし、減額(「20%以上の減少」と「20%未満の減少」の合計)と回答した企業の割合が調査開始以降初めて10%を下回ったため(8.8%)、全体としてはプラス水準を維持しました。なお「横ばい」とする企業は、過去15年で最高の69.8%に上りました。増額したとする企業は減ったものの、総じて安定したIT予算を確保できていると見られます。

 

2016年度(2016年4月~2017年3月)に向けた見通しについては、増額、減額ともに2015年度とほぼ同等の水準であり、高成長とはいえないものの、引き続き安定した状況を維持すると見られます。


なお、このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資増減指数*1」で見ると、2015年度の実績値は「1.51」であり、前年調査時の予想値(0.97)を上回りました。2016年度の予想値もほぼ2015年度並みの「1.42」となっています。


*1:20%以上の減少を-20、横ばいを0、20%未満の増加を+10などとして積み上げて回答数で除した値

<参考資料1> IT予算額増減の経年変化(2014~2016年度予想)
<参考資料1> IT予算額増減の経年変化(2014~2016年度予想)

<参考資料2> IT投資増減指数の変化(2001~2016年度予想)
<参考資料2> IT投資増減指数の変化(2001~2016年度予想)

上昇を続けるリスク対策費用

IT予算の投下先として、近年、一貫して上昇傾向にあるのが、「情報セキュリティ対策」「災害対策」「内部統制」といったリスク対策費用です。今回の調査でも、国内企業においてリスクの軽減が引き続き大きな課題となっていることが浮き彫りとなりました。


IT予算額に占めるリスク対策費用の割合は、情報セキュリティ対策費用が15.3%、災害対策費用が9.6%、IT内部統制向け費用が11.2%と、いずれも直近5年で最大の値となりました。近年、大企業や官公庁で相次いだセキュリティ被害やガバナンスに関わる不祥事が影響を及ぼしていると見られます。また、東日本大震災の発生を受けるかたちで高まった災害対策への関心はその後も衰えていないことがうかがえます。


<参考資料3> IT予算額に対するリスク対策費用割合の経年変化(2011~2015年度)
<参考資料3> IT予算額に対するリスク対策費用割合の経年変化(2011~2015年度)

2015年度に向けて最重要視するIT課題は6年連続で「IT基盤の統合・再構築」。「マイナンバー制度対応」が一躍トップ3に

全20項目の主要なIT動向を取り上げ、その重要度を尋ねた結果では、「IT基盤の統合・再構築」が6年連続で最上位となり、2位も前年同様「ビジネスプロセスの可視化・最適化」となりました。しかし、今回調査の追加項目である「マイナンバー制度への対応」が重要度指数でいきなり3位に入り、IT関係者にとって極めて重大な関心テーマとなっていることが明らかになりました。


<参考資料4> 主要なIT動向に対する重要度指数と実施率の変化
<参考資料4> 主要なIT動向に対する重要度指数と実施率の変化

上述のリスク対策費用割合の上昇にも、マイナンバー制度が少なからず影響している可能性があると見られます。また、クラウド・コンピューティングに関する項目も重要度指数で上位に位置しており、「新規導入システムのクラウドの利用」「既存システムのクラウドへの移行」ともに、多くの国内企業において現実的な選択肢となっていることが確認できました。

低下が懸念されるIT部門の影響力

本調査では、2013年から、「全IT支出のうちIT部門が決定権をもつ割合」を問うていますが、全有効回答の平均値は回を重ねるたびに低下しており、今回の調査では前年調査を5ポイント下回る42.7%となりました。


<参考資料5> IT部門が決定権をもつIT支出割合(平均値)の経年変化(2013~2015年度)
<参考資料5> IT部門が決定権をもつIT支出割合(平均値)の経年変化(2013~2015年度)

製品/サービスへの投資意欲では、「脱・物理サーバ」が鮮明に

今回の調査では、製品/サービスの投資意欲を確認するために、全100項目について現在の導入状況と今後の投資意欲を問い、その回答結果を基に、導入済み企業における次年度に向けた投資額の増減傾向を「投資増減指数」、未導入企業における次年度に向けた導入意欲の度合いを「新規導入可能性」として、それぞれ算出してマッピングしました。


そのうち、サーバ・システムやストレージ、ネットワーク、クラウド・コンピューティング、デバイスなどが含まれる「インフラ/デバイス分野」では、前年調査と同様、「タブレット」「スマートフォン」の2項目が投資増減指数の上位2つを占めました。スマートデバイスへの投資意欲が依然として衰えていないことが確認できました。また、新規導入可能性では、「クライアント仮想化」「ストレージ仮想化」「サーバ仮想化」といった仮想化関連項目が軒並み高い数値を示しています。


また、モバイル、クラウド関連の項目がポジティブな結果を示したのに対して、物理サーバ関連の項目に対する投資意欲は総じてネガティブに振れており、国内企業の「脱・物理サーバ」の動きが鮮明に表れています。


<参考資料6> 製品/サービスに対する投資意欲(インフラ/デバイス分野)
<参考資料6> 製品/サービスに対する投資意欲(インフラ/デバイス分野)

企業に重くのしかかるリスク対策。IT部門に強く求められる差別化戦略

今回の調査結果を受けて、ITRのシニア・アナリスト舘野真人は、「国内企業のIT予算は比較的安定して確保できている状況にあると言えますが、その中身を見ると、定常費用の負担が重く、かつリスク対策費用の割合も拡大の一途を辿るなど、守りを重視せざるを得ない実情が垣間見られます。マイナンバー制度対応に代表される共通課題に取り組む一方で、限りあるリソースを活用した成長に向けた差別化戦略をいかに描くかが、IT部門の大きな課題になるでしょう」と分析しています。


調査の概要

本調査は、ITRが2015年9月3日から9月14日にかけて実施したもので、ITRの顧客企業や主催セミナーへの出席者、ならびにWeb調査の独自パネルメンバーのうち、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者約5,000人に対して、Web経由で回答を受け付けました。その結果、2,443人から有効な回答を得ました。


本調査結果の全結果および分析は、『国内IT投資動向調査報告書2016』としてITRのWebサイトを通じて先行予約販売を開始しております。同レポートの発刊は11月中旬を予定しています。


レポートの詳細は、「国内IT投資動向調査2016」に掲載しています。

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