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プレスリリース

震災を乗り越え、プラス成長を維持した国内企業のIT投資
2012年度は景気の後退懸念によりIT投資も低成長の見込み
ITRがIT投資動向調査2012の結果を発表

株式会社アイ・ティ・アール(ITR、代表取締役 内山悟志)は本日、国内企業を対象に2011年9月から10月にかけて実施した国内IT投資動向調査の一部結果を発表いたします。

本調査では、日本経済の成長力低下の危惧に加えて、今年3月の東日本大震災という大きな事象を受けて、国内企業のIT投資が2011年度にどのような動きを見せているか、また2012年度に向けてどのような方向へ進もうとしているかについて着目しています。

プラス成長を維持した国内企業のIT投資

本調査では、まず、企業のIT予算に関する2011年度(2011年4月~2012年3月)の実績と、来る2012年度(2012年4月~2013年3月)の見通しについて、国内企業553社から有効回答を得ました。

前回実施した2010年度調査では、経済不況の影響で大幅なマイナス成長となった2009年度から回復の兆しを見せましたが、2011年度は、予算額が前年度と比べて増額したとする企業(20%以上および20%未満の増加の合計)の割合は24.8%と、2010年度(24.9%)とほぼ同水準となりました。一方、前年度より減額したとする企業(20%以上および20%未満の減少の合計)の割合は2010年度調査から下降し(26.6%から20.5%)、これにより全体としては若干のプラス成長となりました。

なお、2012年度に向けた予想では、IT予算の増額を見込む企業の割合が23.4%と下降する一方、減額を見込む企業も減少しており、総合的に見れば、2011年度と同じか、やや上回る水準でのプラス成長となると見込んでいます。


<参考資料1> IT予算額増減の経年変化(2010~2012年度予想)

出典:「IT投資動向調査2012」ITR


このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資指数」で見ると、2011年度の実績値は2010年度に記録した0.04から若干上向き、0.60となりました。2010年度調査における予測値(1.44)には達しなかったものの、2011年3月に発生した東日本大震災によって多くの企業が事業戦略の見直しを迫られたことを考慮すれば、わずかとはいえプラス成長となったことを評価すべきといえます。しかし、2012年度に向けた予想では0.83と小幅な上昇にとどまっており、今後の国内企業のIT投資が低成長で推移することをうかがわせる結果となりました。


<参考資料2> IT投資指数の変化(2001~2012年度予想)

出典:「IT投資動向調査2012」ITR

IT予算比率と戦略投資比率はともに上昇

企業の売上高に占めるIT予算比率では、2011年度は2010年度を0.2ポイント上回る3.0%となり、5年振りに3%台に上りました。ただし、この数値については分母となる売上高が伸びなかったことが影響したとも考えられます。また、定常費用(運用・管理など定常的に発生する費用)を100としたときの戦略投資額(新規システム構築、大規模なリプレースなどに充てられる費用)の比率も上昇し、過去最低となった2010年度(50.1)から持ち直して62.0となりました。リーマンショック以降続けられてきた各企業の定常費用の削減努力が、ここにきてようやく実を結びつつある結果と見ることができます。

大きく上昇したリスク対策費用の割合

今回の調査で、大きな変動が見られたのがリスク対策費用の比率です。IT予算に占める「情報セキュリティ対策費用」と「災害対策費用」の比率は、いずれも2010年度から大きく上昇し、前者は12.5%、後者は7.0%となりました。とりわけ災害対策費用は、この項目の調査を始めた2006年度以来最高の値を記録し、東日本大震災の発生を受けて多くの企業が災害対策を強化したことが見てとれます。また、情報セキュリティ対策についても、国内企業において個人情報や機密情報の大規模な流出事故が相次いだことにより、改めて高い関心が集まったと見られます。


<参考資料3> IT予算に対する情報セキュリティ対策費用および災害対策費用の割合の経年変化

出典:「IT投資動向調査2012」ITR


2012年度のIT投資は低成長の見込み。投資戦略には「選択と集中」がより強く求められる

今回の調査結果を受けて、ITRのシニア・アナリスト舘野真人は、「2011年度の国内企業のIT投資は、東日本大震災の発生によって企業の事業戦略が大きく見直されるなか、前年度から若干のプラス成長を維持しました。とりわけ、災害対策、情報セキュリティ対策といったリスク対策費用は前年度から大幅に伸びており、緊急事態のなかでITの重要性が改めて強く認識された1年であったと言えるでしょう。また、近年低下の一途をたどっていた戦略投資比率が久しぶりに上昇に転じたことも好材料のひとつであると言えます。しかし、2012年度に向けては、全体のIT予算額がわずかな上昇にとどまると見る企業が多く、個々の製品/サービスに対する投資に関しても、大幅な増加を見込む前向きな企業は限定的です。既存の資産をいかにスリム化して戦略投資の余力を確保するか、また災害やセキュリティ上の脅威に対する信頼性をいかに担保するかという取り組みは、IT責任者の頭を悩まし続けるテーマになると考えられます。経済の先行きが依然として読みにくい今日、IT責任者は高い効果が見込める分野に迅速に投資を振り向けるためにも、“選択と集中”の姿勢がこれまで以上に強く求められるでしょう。製品/サービス分野では、モバイル端末、スマートフォンへの投資を拡大させるとした企業が目立ちました」と分析しています。

【調査の概要】

本調査は、ITRが2011年9月21日から10月19日にかけて実施したもので、ITRの顧客企業ならびに主催セミナーへの出席者などのうち、国内企業の情報システム系および経営企画系部門の部長級以上の役職者に対して、郵送した調査票への記入もしくはWeb経由で回答を受け付けました。その結果、556社から有効な回答(1社1人)を得ました。

本調査結果の全結果および分析は、『国内IT投資動向調査報告書2012』としてまとめ、 2011年12月上旬よりITRのWebサイトを介して販売を開始します。

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