事業環境と技術環境が継続的に変化する中、IT部門が自律的に健全性を維持し続けることは容易ではない。第三者による定期的なチェックがなければ、組織は課題を認識しないまま内包し、改善の機会を逸する恐れがある。本稿では、組織を人の健康管理になぞらえ、IT部門における定期的なヘルスチェックの意義を整理する。
IT部門を取り巻く環境は、事業や業務の複雑化、外部サービスの活用拡大などを背景に、継続的な変化の過程にある。このような状況下では、現行の体制や運営に大きな問題がないようにみえても、内部では小さな歪みや非効率が蓄積している場合がある。こうした状態が放置されると、予算配分、業務範囲、意思決定の仕組みが固定化し、変化への対応力が次第に低下していく。その結果、組織の緊張感が意図せず弱まり、必要な変革を阻害する要因となりかねない。特に、長年維持されてきたプロセスや特定のベンダーとの強固な関係性は、安定をもたらす一方で、新しい手法やコスト構造への刷新を妨げる「見えない壁」となる懸念がある(図1)。
人が健康診断や人間ドックなどを通じて自覚症状のない変化を把握するように、組織も外部の視点から状態を点検することが重要である。IT部門では、担当者の献身的な対応によってシステムの老朽化や属人化が表面化せず、結果として組織としてのリスクが表出化しにくくなる場合がある。その結果、負荷の偏在や役割の重複といった兆候が存在していても、「健全である」という認識が形成され、問題が見過ごされることも少なくない。健全性を意識的に定期的に確認する仕組みをもつことは、現在の安定を維持するだけでなく、将来の成長に向けたリソースを確保するための重要な基盤となる。