国内ユーザー企業においてローコード/ノーコード開発ツールの導入意欲が高まっているが、基幹系システムのように複雑かつ長寿命が期待されるアプリケーションに適用する場合は、事前に十分な検討を行うことが必須となる。これを怠ると、トータルコストの増大、サービス停止によるビジネス機会の損失、セキュリティ/コンプライアンス・インシデントの発生といったリスクに直面する可能性がある。
ローコード/ノーコード開発ツールを導入する国内ユーザー企業が増えている。図1に、ITRの『IT投資動向調査2025』から、110製品・サービスのうち、導入済み企業における2025年度の投資増減を示す「投資増減指数」の上位10製品・サービスを示した。これを見ると、「ローコード/ノーコード開発」が3位に位置し、前年の同調査(22位)から大きく順位を上げた。この背景には、AI機能を組み込んだ企業アプリケーションの開発ニーズが拡大していることがある、とITRではみている。
図2に、ITRが実施した別の調査結果から、企業がローコード/ノーコード開発ツールを適用しているシステム領域を示した。現在、ローコード開発プラットフォームを「本番利用中」または「テスト中」の企業において、最も利用されているシステム領域は「財務会計・管理会計」であり、次いで「人事」「給与」であった。いわゆる基幹系システムにローコード/ノーコード開発ツールを適用している企業が多いことがわかる。本データは少々古い調査から得られたものであるが、ITRの知見では現在もこの傾向に大きな変化はないと考えている。既存の基幹系システムを補完する用途でローコード/ノーコード開発ツールを導入した企業が多いが、基幹系システム再構築のタイミングで同ツールの適用を検討する企業も少なくないとITRでは予測している。