2022年末にChatGPTが公開されて以降、生成AIをどのように業務活用するのかが重要なテーマとなっている。また、クラウドで提供される生成AIに加えて、スマートフォンやPCなどのエッジデバイスで稼働するオンデバイスAIも登場している。本稿では、それらのなかで企業への影響が大きいとみられる「Copilot+ PC」について考察する。
企業における生成AIの業務適用への注目が高まるなか、多くの企業ではセキュリティやサポート体制などの要件を考慮しつつ、Microsoft社のAzure OpenAI Serviceや、Google社のGeminiなどの生成AIの基盤モデルの導入検討が進められている。また、カスタマーサービス部門ではチャットボットや音声認識、マーケティング部門では顧客の属性や行動、動線などの画像解析といった、個別アプリケーションのAI適用も進んでいる。これらに加え、注目が高まっているのがオンデバイスAIである(ITR Insight『エンタープライズAIデバイスの活用に向けて』I-324061)。その中でも、特に多くの従業員が業務で利用するWindows PCにオンデバイスの生成AIが組み込まれた「Copilot+ PC」は、企業への影響が大きいとみられ、今後、社内標準PCの選定と従業員のAI活用方針の再検討を迫るものとなろう。
Copilot+ PCとは、AIアシスタントであるCopilotの実行に適したWindows PCを指し、Microsoft社が承認したCPUあるいはSoC(System on a Chip)で、かつ40TOPS(毎秒40兆回の演算)以上の推論処理を行えるNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)の搭載と、16GB以上のRAM、256GB以上のストレージ(SSD)の搭載要件を満たすものとなる。2024年5月にMicrosoft社がCopilot PCの要件を発表した時点では、Qualcomm社の最新SoCであるSnapdragon X Plus/Eliteを搭載したArmベースのWindows 11 PCが対象であったが、2024年後半には、AMD社のRyzen AI 300およびIntel社のLunar Lakeを搭載したCopilot+ PCの登場が見込まれている。