DXの推進を含む企業変革には抵抗がつきものである。多くのDX推進担当者から、社内の抵抗や無関心によって変革の行く手を阻まれる状況が報告されている。DXプロジェクトに関するこれまでのケーススタディから浮かび上がる「変化に対する人の抵抗」に対処するための勘所を示唆する。
DXに限らず組織における変革には抵抗がつきまとうものであり、避けて通ることはできない。「変化に対する人の抵抗」を打破することができなければ、いかに経営者が旗を振り、DX推進者が奮闘しても、会社全体を突き動かすことはできない。ITRでは、DXの推進における「変化に対する人の抵抗」に対処するために、チェンジマネジメントの重要性を唱えてきた(ITR Insight 2021年夏号『DX推進におけるチェンジマネジメントの要点』#I-321073)。
チェンジマネジメントでは、企業レベルの変革に着目したJohn P. Kotter氏の「変革の8段階プロセス」や、個人レベルの変革に焦点をあてたProsci社のADKAR(R)モデルなどいくつかのフレームワークが存在する。しかし、変革の推進アプローチに定番の方法論があるわけではなく、変革の目的は各社各様であることに加えて、企業内部の状況もそれぞれに異なるため、フレームワーク通りに進めれば変革が成功するというものではない。したがって、変革に成功したリーダーの行動様式や問題に対処した際の経験から、具体的なヒントを得ることが非常に有効である。本稿では、ITRがこれまで支援したDX推進プロジェクトの経験や顧客企業へのヒアリングによるケーススタディから、企業変革に対する抵抗に対処するためのチェンジマネジメントのTipsを紹介する(図1)。