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【R-222082_6962591637】データドリブンな意思決定の推進

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 14, 2023 11:40:12 AM

データに基づく意思決定の価値を理解しながら、どのように実践していくべきかという課題に対して、明確な道筋を描き切れている企業は少ない。その阻害要因は、技術力やIT活用の不足だけではないと、ITRでは考えている。データドリブンの組織文化をどうすれば醸成できるのか、本稿では正しい意思決定を阻害する原理を掘り下げつつ、その一助を考察する。

データドリブンではない意思決定は無意味なのか

ITR Review 2022年7月号『コモディティ化するAIの活用』(#R-222071)において、不確実性の時代においてこそ、ファクトデータに基づく予測を活用したデータドリブンな経営を推進し、AI技術による意思決定プロセスの半自動化・自動化に取り組むべきであると述べた。勘や経験に頼らず、データに基づく意思決定を下す重要性は広く肯定されており、AI技術による半自動化・自動化もそうした認識からの自然な帰結として受け止められつつある。しかしながら、そうしたデジタル化やAI技術の進歩だけで、企業における意思決定を高度化できるわけではない。例えば、DXへの取り組みで先行したデジタルネイティブ企業の経営幹部は、直感や経験よりも分析から得られた知見によって正しい意思決定を行い、そのリーダーシップで組織文化の変革も推進しているに違いない。そして、こうした強いデジタル文化が醸成できた企業に対して、伝統的な既存企業の多くが時代遅れになってきているといった、短絡的なレッテルがその典型である。

KKD、すなわち勘・経験・度胸の略語は、熟練者の職人技を表しているが、端的にいえば直感力、あるいは経験に裏打ちされた直感と言い換えることができるだろう。直感力は、表面的には「好き・嫌い」「なんとなく正しい・正しくない」「美しい・美しくない」といった感情に左右された判断のように見える。しかし、これを熟練の経験で蓄積された定性的なデータから導き出された判断と捉えてみればどうだろう。確かに、直感的な判断が正しくないこともあるが、誤った判断を迅速な代案でフィードバックすることができれば、日々の事業活動のなかで行われている小さな意思決定や、より現場業務に近いタイプの意思決定においては適する場合も多いだろう。