DXの推進では、DX部門などの専門組織だけでなく、事業部門の現場などの積極的な関与が重要となる。昨今、現場部門にデジタルリーダーを設置する動きが見られるが、その任命と育成にはどのような工夫が必要となるのだろうか。また、DX人材のキャリアパスにおける位置づけをどのように考えるべきなのだろうか。
多くの企業でDXの推進が本格化するなか、DX人材の確保・育成に苦慮する企業が少なくない。昨今では、DX推進に向け専門の組織を設置する企業が増加しているが、企業のDXに対する取り組みの浸透度合いや関与者の規模、実施案件数などによって適合する組織形態は違ってくるため、常に組織を進化させていかなければならない(ITR Review 2019年7月号『DX推進組織の進化のステップ』#R-219071)。特に、DXへの取り組みが活発化してくると、DX推進組織だけでは多数のデジタル化案件を回しきれないという事態に直面する。これは、決して悪いことではなく、変革への意識が事業部門などの現場にまで浸透してきたことの証しともいえる。現場に近い事業部門でのデジタル化案件が増加し、案件によっては事業部門が主体となって推進するほうが、スピード感を持って進められるという場面が多くなる。そのような場合は、DX推進部門のような横断的な組織は、施策実施の後方支援や環境整備に軸足を置くようにし、実際のデジタル化案件の推進主体は事業部門側に移管するほうが合理的といえる。
各事業部門が、DXに関する全社的な方針を踏まえつつ、自らデジタル化やイノベーションに取り組む姿勢を持ち、各部門が自律的な活動を主体的に起こしていくためには、事業部門側の組織体制を整え、人材を確保・育成していくことが、より重要となる。