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【R-220072_6962490150】コロナ禍で再考するBCPとしてのDaaS

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 18, 2023 6:23:19 AM

Microsoft社が2019年10月1日にリリースしたWindows Virtual Desktopは、Windows 10をマルチセッションで接続できる唯一のDaaS(Desktop as a Service)であり、従来のVDI/DaaSのコスト面の障壁を下げることが期待されている。一方、コロナ禍によりBCP対策としてDaaSを再考する企業も少なくないであろう。本稿では、ITRが2020年4月に実施した調査からクライアント仮想化関連ソリューションへの投資意欲とWindows Virtual DesktopがDaaS市場に与える変化について考察する。

コロナ禍におけるテレワークの拡大とクライアント仮想化

2020年1月に日本で最初の感染者が確認された新型コロナウイルスは、3月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミックを発表し、在宅勤務を実施・強化する動きが急激に拡大した。ITRでは、今回のコロナ禍が、企業のIT戦略にどのような影響を及ぼすかを分析すべく、国内企業でIT戦略の策定やIT実務に関わる担当者を対象に、「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」を実施した(調査時期:4月下旬、有効回答:1,370件)。

同調査において、今回の感染拡大を受けて企業が緊急で取り組んだ項目としては「テレワーク制度の導入」が最多で、全体の3分の1を超える37%の企業が「緊急措置として実施し、完了」させていることがわかった。これに次いで、回答割合が高かった項目は「リモートアクセス環境の新規・追加導入」と「コミュニケーション・ツールの新規・追加導入」であり、制度の導入と合わせて、テレワークに必要なITインフラ整備が実施されたことが見て取れる。

さらに、「リモートアクセス環境の新規・追加導入」について、製品・サービスまで掘り下げ、クライアント仮想化関連ソリューションである「シンクライアント端末、VDI/DaaS」に関する導入(予定)を見ると、コロナウイルス感染対策として、すでに急遽「新規導入した/3ヵ月以内に導入する」と回答した企業は有効回答の7.9%となり、「ライセンス数の増加など追加投資をした/3ヵ月以内に追加投資する」と回答した企業も7.9%に上った(図1)。

昨今の働き方改革推進の動きは、DaaSおよびデスクトップ/アプリケーション仮想化の導入を後押ししており、以前からテレワーク推進のため検討が進んでいた。ただし、オンプレミスであるデスクトップ/アプリケーション仮想化はサーバやストレージの追加が必要となるため、緊急かつ容易に導入できるものではない。このことから、図1に示す「新規導入した/3ヵ月以内に導入予定」とする企業、および導入済み企業がコロナ対策のために「追加投資した/3ヵ月以内に追加投資予定」とする企業は、いずれも「シンクライアント端末、VDI」ではなく「DaaS」として回答した割合が高いと推測される。もちろん、テレワークを実施するユーザーを増やすためにシンクライアント端末を追加購入した(購入する予定)企業も存在しよう。また、同調査での「新規導入した/3ヵ月以内に導入予定」の7.9%という値は、ITRがコロナウイルス感染症発生前の2019年8~9月に実施した「IT投資動向調査2020」においては、「DaaS」を「直近に導入予定」とした企業の割合を僅かではあるが上回っており、2020年度の半期に至らない期間に導入が加速していると捉えられる。

図1.コロナ禍におけるシンクライアント端末、VDI/DaaSへの緊急投資状況

出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」(2020年4月調査)