超高速開発ツールはコーディング経験がないIT部門にとっては魅力的に映るが、決して万能薬ではない。過去にも簡易開発ツールは数多く提供されてきたが、いずれも失敗に終わっているといっても過言ではない。超高速開発ツールの検討にあたっては、利用上の制約や限界を見定めたうえで、適用領域を限定して活用する必要がある。
JavaやC#のような汎用プログラム言語を用いずに迅速にアプリケーションを開発する「超高速開発ツール」は、「ローコード開発ツール」とも呼ばれる。これまで国内において大きなブームになったことはないものの、10年以上前から一定割合のユーザー企業から支持されている。
この分野には数多くのツールが市場に投入されているが、大きく3つのカテゴリに分類できる(図1)。1つ目の「コード自動生成ツール」は、アプリケーションの設計や定義を行い、JavaやC#などの汎用プログラム言語のソースコードを自動生成するものである。プログラムの実行は、生成するプログラム言語の標準的な実行環境を利用するため、独自ランタイム環境は不要である。2つ目の「RIAツール」は、Rich Internet Applicationと呼ばれる、Webブラウザの標準機能では実現困難な高度なユーザー・インタフェースを表現できる専用プラグインを利用し、ユーザー・インタフェースとプログラムロジックを自動生成する。3つ目の「メソドロジ一体化ツール」とは、独自のメソドロジ(開発方法論)に基づいてアプリケーションの基本設計を行い、汎用プログラム言語のソースや独自実行プログラムを生成するものである。
いずれのツールも汎用プログラム言語と比較すると、コーディング量が減少するか、皆無になるため、プログラム生産性は向上する(コーディング工数/時間の減少)。
しかし、短所も多い。「コード自動生成ツール」が生成するソースコードは独特な構造を採用していることが多いことから、開発エンジニアがソースコードを解析することは容易ではない。ソースコードに対して自由に機能追加や修正を行うのは危険である。また、自動生成されるソースコードは、その汎用プログラム言語の最新バージョンに対応していないことが多く、超高速開発ツールが推奨する言語バージョンやランタイム環境に準拠しなければ正常に動作しないことも多い。「RIAツール」は、独自のRIA環境が特定のWebブラウザおよびバージョンにしか対応していないことが多く、自社の標準のWebブラウザと齟齬を来す可能性が高い。「メソドロジ一体化ツール」は、まずそのメソドロジを理解する必要があるため、ツールに慣れるまでに時間がかかる。どの超高速開発ツールも国内企業における利用率は非常に低いと見られ、SIベンダーからエンジニアを調達することは困難である。また、どのようなアプリケーションでも開発可能な汎用プログラム言語とは異なり、超高速開発ツールはどれも生成可能なアプリケーションに制約がある。