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【R-219061_6962699898】拡大するサブスクリプション・エコノミー

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 21, 2023 4:30:17 AM

あらゆる業界において、既存のビジネスモデルを刷新するサブスクリプション・ベースによるサービスの産声があがっている。パラダイムシフトを促す新たな価値観に基づいて、将来の競争優位性の獲得に向けたビジネスモデルの検討を開始することが、多くの企業で求められている。

サブスクリプション・エコノミーの形成

現在、多くの企業が、自社商品におけるサブスクリプション・モデルの適用を指向し、サービス市場への参入を進めている(ITR Insight 2017年秋号「サービスビジネスへの戦略シフト」#I-317101)。その背景には、顧客エクスペリエンスの向上や新市場の開拓といったマーケティング上の課題だけではなく、収益の安定化、さらには投資家への訴求力向上といった経営上の課題に対峙する企業の姿勢がある。市場ではオーナーシップからユーザーシップ(所有から利用)の動きが加速しつつあり、会員制のサービスによって継続性が高い収益源を確立できれば、財務力の向上を期待できる。また、デジタル技術により顧客へのタッチポイントを得られれば、変化の激しい消費行動や需要トレンドをリアルタイムに捕捉することが可能となり、企業競争力の向上につながる。

デジタル・トランスフォーメーションが進行するなかで、他社に先駆けて消費トレンドを把握することは、収益化戦略において極めて重要な意味を持つ。宿泊サービスを例にとろう。格安ホテルチェーンのインドのOYO社は、高頻度で宿泊の需給状況、イベント、天候などのデータを取得し、AIで分析することで部屋ごとの価格設定を常時最適化している。環境変化を踏まえて需給バランスをとり、収益を最大化するためである。この料金の変更手続きは、1日に4,300万回にも及ぶ(2019年1月28日付け日本経済新聞より)。

デジタル技術を駆使したサブスクリプション・サービスにより顧客接点を確保することは、他社と一線を画すビジネスモデルをもたらし、市場訴求力を高める。こうした認識から、あらゆる業界において多種多様な新サービスがリリースされ、サブスクリプション・エコノミーが形成されつつある。もはや、サブスクリプションは旧来の定期刊行物や携帯電話の加入者サービスにとどまらない。自動車、エレクトロニクス、小売など多岐の業界にわたり、またその業態もB2CからB2E、B2Bにも及ぶ状況となっている。