今日のデジタルイノベーション案件の推進においては、ITベンダーとの共創や協業の枠組みを備えることが不可欠である。ただし、従来のエンタープライズITに関わる案件と同様の業務委託契約では成果を期待することは難しい。より柔軟かつ低リスクの契約スキームを求めるべきである。
デジタルイノベーション、すなわちデジタル技術を駆使したプロダクトイノベーションやプロセスイノベーションにおいては、非デジタル系のイノベーション(例えば、ブランドリニューアルなど)と異なり、ITベンダーの関与が避けられないといえる。スマートプロダクトでリモートアップデートの仕組みを搭載しようとすれば、クラウド技術やコネクティビティの確保が不可欠となり、クラウド事業者や通信キャリアの関与が求められる。生産効率を高めるためのプロセスイノベーションを行ううえでは、欠損率や異常値をリアルタイムで解析する仕組みをベンダーとともに構築することが必要となろう。デジタル技術やITをどのように適用するかによって、実現可能性や期待効果が大きく変わってくる。したがって、こうしたベンダーとのリレーションシップは、イノベーションの本格展開時だけではなく、企画・検証の段階から要求される点に留意しなければならない。