センサー、デバイス、制御機器の周辺に実行環境を分散配置するエッジコンピューティングが注目を集めている。エッジ側の大量データに基づき、迅速かつ自律的に応答できるオープンなIoTプラットフォームやソリューションの開発が進みつつあるなか、企業は、どのように評価し検討していくべきかの基準や方針を明確にする必要がある。
あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの急速な普及が見込まれるなか、ITRが2017年に実施した調査では、2017年の国内IoT市場規模はすでに約5,000億円であることが明らかとなった。さらに、2020年の市場規模は約1兆4,000億円に到達すると見込まれている(ITR Insight 2018年夏号「国内IoT市場動向 ~投資実態に基づく現状把握~」 #I-318073)。
IoTが適用される産業分野は多岐に及ぶが、基本的な考え方は、「第四次産業革命」で注目を集めたCPS(Cyber Physical Systems)、すなわち、サイバー(IT:Information Technology)とフィジカル(OT:Operation Technology)の融合の延長線上で捉えることもできる。これは、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングを有効活用することで、デジタルビジネスを創出する狙いと言い換えられるだろう。
クラウドコンピューティングは、インターネット空間、すなわち上空を管轄するテクノロジであり、GAFA(Google社、Amazon.com社、Facebook社、Apple社)と呼ばれる米国の巨大IT企業に象徴されるように、集中化を指向するソフトウェア主体のプラットフォームである。これに対して、エッジコンピューティングは、地上を管轄するテクノロジであり、ソフトウェアだけでなく機器、デバイス、産業ロボットなどハードウェアとの協調が避けて通れない領域である。
エッジコンピューティングは、上空で寡占化していくクラウドコンピューティングに対する警鐘、あるいはアンチテーゼとして位置づけられている側面もある。