現在、自社ITインフラの将来像を「ハイブリッドクラウド」と考えている企業は多い。「クラウドファースト」を標榜している企業は、その言葉の裏に「オンプレミス・セカンド」がないのか自問自答すべきである。クラウド+オンプレミスでは、クラウドの真の価値は享受できないことを理解すべきである。
前編では、ハイブリッドクラウドを自社ITインフラの将来像と考えている国内ユーザー企業は、自社インフラのクラウド達成度を分析したうえで、ITインフラの将来像を再検討すべきであると述べた(ITR Review 2018年5月号「ハイブリッドクラウドの価値と実現可能性(前編)」#R-218052)。クラウド・コンピューティングの活用パターンはさまざまなものがあるが、まずこれらの活用パターンを詳細に分析し、それらの比較を行ってみる。クラウド活用パターンは大きく分けて以下が考えられる(図1)。
■パブリッククラウド集約
自社ITインフラを全て単一のパブリッククラウド(クラウドサービス)に集約するパターンである。
■連携型/併用型マルチクラウド
ITRでは、異なる複数のパブリッククラウドが混在するパターンを「マルチクラウド」と呼んでおり、プライベートクラウドとパブリッククラウドを透過的/統合的に利用できるよう連携させるケースと、各パブリッククラウドを独立的に併用するケースがある。これをそれぞれ「連携型」「併用型」と称している。連携型は、異なるアーキテクチャのパブリッククラウドを連携させる必要があるため、その実現は困難といえる。併用型は、クラウドの利点を十分に活かすことができないが、複雑な連携が不要であるという点で有利である。
■連携型/併用型ハイブリッドクラウド
ITRでは、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を利用するパターンを「ハイブリッドクラウド」と呼んでいる。マルチクラウドと同様に、「連携型」と「併用型」がある。いずれの型においても利用するパブリッククラウドが単一なのか複数なのかで、その特性は大きく異なる。複数のパブリッククラウドを利用する連携型ハイブリッドクラウドは、各クラウドのアーキテクチャを十分に理解し連携させる必要があるため、一般的な国内ユーザー企業ではその実現へのハードルは非常に高いといわざるを得ない。併用型はパブリッククラウドが単一でも複数でも適材適所でパブリッククラウドを選択すればよいので、各クラウドのアーキテクチャを十分に理解しなくても実現可能である。しかし、マルチクラウドと同様に、併用型はクラウドの利点を十分に享受することができない。
■パブリッククラウド+仮想統合サーバ/単体サーバ
オンプレミスのITインフラを仮想統合サーバや単体サーバの集合体、つまり非クラウド環境を利用し、パブリッククラウドと併用するパターンである。一部パブリッククラウドを利用してはいるが、企業ITインフラの全体としてはクラウド・コンピューティングとはいえないため、クラウドの利点はほとんど活かされない。
■プライベートクラウド集約
オンプレミスに設置したプライベートクラウドに集約するパターンである。単一のベンダー(VMware社、Microsoft社、Oracle社など)またはアーキテクチャ(OpenStackなど)のプライベートクラウドを利用するパターンと、複数のベンダー/アーキテクチャを利用するパターンがある。前編でも述べたように、プライベートクラウドはパブリッククラウドに比べて、プログロム可能なインフラが実現困難であり、従量課金ではない、という点で見劣りする。
クラウド・コンピューティングに前向きな国内ユーザー企業は、現時点で自社が考えているクラウド活用パターンを図1にしたがって整理するとよいだろう。