インダストリー4.0とインダストリアル・インターネットが、協働してIoTの国際標準化の検討を進めていくこととなった。それぞれが焦点を当てるスコープが異なることなどから、両者がすぐに一体化するとは思えないが、相互運用性を高める検討が進められていくだろう。数年後には、一気にデジタルイノベーションが加速することも考えられる。企業は、IoT国際標準化の動向を注意深く見守るべきである。
2016年3月10日付の日本経済新聞が報じた、「IoT国際規格策定、独米の推進組織が連携合意」と見出しを付けたニュースに驚きを感じた企業が多かったのではないだろうか。Industrie 4.0(以下、インダストリー4.0)を提唱する「インダストリー4.0プラットフォーム」と、IIoT(Industrial Internet of Things)を提唱する「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」の両団体は、技術標準・規格の協議を進めていくことで合意した。政府主導でインダストリー4.0を国策として推進するドイツと、GE社をはじめとする民間企業のリーダーシップでIIoTを主導するアメリカという、これまでの対立構造が今後大きく変わっていくことになるかもしれない。目的やスコープも異なる両陣営は、激しく標準化やプラットフォームの主導権を巡って争うと当初は見られていた。今回の発表で、今後は、上位のアプリケーションから下位のデバイスに至る相互運用性や、制御データのセキュアな流通などを確保する活動に向けて協働することとなった。
インダストリー4.0とIIoTも、進化する情報通信技術を積極的に活用して、デジタルビジネスおよびイノベーションを促進する狙いは共通であり、その中核はいうまでもなくIoTである(ITR Insight 2015年春号「Industrie 4.0から学ぶべきもの」 #I-315042)。しかし、両者の運営スタイルや標準化の方向性には多くの差異も見られる。何より、インダストリー4.0がモノづくり・製造起点であるのに対して、IIoTは広く産業・ビジネスプラットフォーム起点であるといった違いがある。また、標準化についても、それぞれ、成文化重視・厳格・閉鎖的に対して、デファクト重視・寛容・開放的といった文化の差異を指摘する声も多かった。