アウトソーシングを採用する企業において、一定期間の経過後、対象業務や契約金額などの面で見直しを進める例は数多い。しかし、アウトソースすべきか否かといった議論を抜きに、アウトソーシング方法や内容を改善しても十分な実施効果は得られない。アウトソーシングの見直しに先駆けて、自社の経営環境やITサービス市場の動向を反映したソーシング方針のあるべき姿を再設計することが、有益である。
IT部門が業務システムの設計や基盤サービスの運用を実施するうえで、どの組織が何を行うかは、業務計画や職務分掌で定められているのが一般的である。企業によっては、IT子会社やコア・パートナーが存在し、オペレーショナルな領域は、そうした企業と委託契約のもと遂行する方針となっているケースもある。このようなアウトソーシング契約は、大幅な見直しがなされないまま、現在に至る例もあり、なかには過去30年以上に及ぶ長い実績を持つ企業もある。しかし、その一方で、現在のアウトソーシング体制が恒久的にベストシナリオであると胸を張るCIOは必ずしも多くない。
アウトソーシングを採用する企業は、常に何らかの課題を抱えていることが指摘される。例えば、特定のベンダー(シングルベンダー)と長期契約を結ぶような場合は、ベンダーへの依存度が高くなり、パフォーマンス検証が困難となったり、ベンダー・ロックインのリスクを抱えたりすることがある。また、マルチベンダーに分散させた適材適所のアウトソーシングを指向する場合は、サイロ化が進みやすく、ベンダー・マネジメントの負荷が高くなりがちである(ITR Insight 2014年春号「ITアウトソーシングの再考」#I-314041)。
アウトソーシング費の支出が大きい企業では、現行の体制を見直す機会を設けて、年次で再検討する例が見られる。この時に注意したいのが、業務遂行のコストや品質、あるいは特定ベンダーへの改善要求といったアウトソーシングを遂行する上での課題だけでなく、インソーシングを含めたソーシング方針のあり方についても検討視野に入れるという点である。長期契約後、数年を経過すると自社の経営環境、ビジネス方針、またITサービス市場の環境も変化するだろう。そうした環境変化に適応するには、「いかにアウトソーシングを改善するか」の前に、「アウトソーシングすべきか否か」を議論しなければならない。例えば、買収先の海外拠点のITを支援するために、一部のIT部員を出向させる必要がある場合、アウトソーシング対象を拡大して補う、といった方針を立案する。そのようにソーシングのアイデアライゼーション(理想化すること)を行ったうえで、現行アウトソーシングを見直すことにより、企業方針に合致した体制の構築が期待できる。