少子高齢化やグローバル化といった社会・経済的な環境変化の影響に加えて、モバイル、クラウド、ソーシャルといった技術のうねりは、企業におけるビジネスや業務の遂行形態および組織運営の方法に大きな変革をもたらすと考えられる。本稿では、「トライブ化」をキーワードに、将来の組織運営や従業員のワークスタイルのあり方を予測し、それを支える企業ITの要件について考察する。
「トライブ」とは、もともとは部族を意味し、何らかの共通の興味や目的を持ち、互いにコミュニケーションの手段があることでつながっている集団を指す(「トライブ~新しい“組織”の未来形」セス・ゴーディン著、講談社)。一般社会や消費者市場では、すでにトライブ化が始まっている。これまではそれぞれに分散し、相互につながりを持たなかった人々が、インターネットやソーシャルメディアなどを通じて自分たちの意見を同期化し、行動を調整し、その結果を記録して発信できるようになった。すなわち、人々は自由につながり始めており、そのつながりは大きな力を持ち始めている。情報の共有や交換が進むことで、情報格差が縮小し、他の社会や他者の考えに触れる機会が増大したことから、「縦社会」が崩壊し「横社会」が形成されていった。さらに、情報の透過性が高まると、求心力を持つ複数の個人がハブの役割を担うようになり、その周りにトライブが生まれ、情報の流れは縦横無尽となることで「網社会」が形成されつつある(ITR Insight 2012年冬号「ソーシャル/モバイル時代のマーケティングとCRM」#I-312013)。