新型コロナ対応により、集合研修がオンライン研修へと急速にシフトするなか、企業は企業内研修インフラを再構築するとともに、より自発的、自律的な企業内学習を実現することが求められている。本稿では、ニューノーマルにおける企業内学習環境のあるべき姿と、それを実現するために必要となるITインフラについて考察する。
新型コロナウイルス感染症は、企業内研修に大きな変化をもたらした。ITRが2020年8〜9月に実施した『IT投資動向調査2021』によると、コロナ禍を受けてオンライン研修を導入した企業は33%、これから導入予定の企業は11%となり、回答企業の4割以上がオンライン研修を導入することが明らかとなった。
新型コロナ対策による企業内研修の現状について、「集合研修」「eラーニング」「OJT」の研修形式別に見ると、まず、「集合研修」は、一部はWeb会議システムなどを利用したオンライン研修に移行しているが、それ以外は中止あるいは延期されるケースが散見された。オンライン研修に移行しても、講義形式の座学であればそれほど問題はないが、実習やワークショップの場合は、集合研修と同等の環境を準備することは難しく、課題が大きいといえる。
「eラーニング」は、クラウド環境やクラウドサービスに移行済みであれば、テレワーク環境でも問題なく利用できるが、オンプレミス環境で構築された一部のシステムは構内LANでの利用を前提としているため、テレワーク環境では、ネットワークやデバイスの性能などがネックとなって利用を中断したケースもある。
「OJT」も集合研修と同様、多くが中止あるいは延期の状況にある。実施する場合は、Web会議システムやグループチャット、電子メールなどを利用することになるが、元来、OJTは、対面のコミュニケーションを前提としており、テレワーク環境では、知識継承の効率や効果が大きく低下するため、最も課題が大きいといえよう。