グループワイドで共通ITのシェアードサービス化を図ることによるコスト効率の向上、また、破壊的イノベーターに対する自社ITのアドバンテージの訴求に向けた「IT as a Service」が大手企業を中心に浸透しつつある。本稿では、ITサービスのグループ展開に焦点を当てて、その動向と今後のあり方を解説する。
本稿では、ITaaS(IT as a Service)の動向について紹介しつつ、その展開手法を解説する。ITaaSは、グループIT戦略を推進する大手企業のIT部門、あるいはIT子会社の経営/事業企画部門にとって重要なテーマであるが、その推進プロセスや展開手法に課題を抱えるケースが少なくない。ポイントや留意点を踏まえた実践的なITaaS展開のヒント集として本稿を役立てていただきたい。まずは、大手企業にITaaSが普及する背景を説明する。その前段で、そもそも企業ITに期待される役割とは何なのかを見て行きたい。
ITシステムが導入されるようになって以来、企業におけるITの利用範囲は拡大し、その役割は時代に応じて変化している。図は、期待される役割について、現在と中長期(3~5年後)での変化をとらえたものである。
調査結果では、これまでIT組織が担ってきた従来型機能やIT改革に関わる業務へのニーズが大きく減少し、新しい機能として業務改革やビジネス戦略に関わる業務のニーズがやや増加することが明らかとなった。ただし、減少したといっても従来型機能のニーズは依然として高く、不要となるわけではない。企業は、中長期へ向けて、従来型IT機能と新しいIT機能の双方を備えなければならないことが示唆されている。