クラウド・コンピューティングが国内で紹介されるようになって5年が経過する。多くのパブリッククラウドやプライベートクラウドが登場し、企業における利用度も高まっている。しかし、クラウドというIT領域における先端技術は進化が激しく、新しいサービス/製品が投入され続けており、市場の動向を把握している国内ユーザー企業は多くない。 クラウドにおけるテクノロジ、サービス、製品の最新動向を包括的に理解し、総合的な設計思想を持ってクラウドに取り組むことが、成果をあげるために重要である。
今なお多くのメディアや一部のコンサルタントが「クラウドはバズワード」や「クラウドは企業システムに使えるのか」といった懐疑的な視線を投げかけるが、現実の世界はそのような論調を気にする企業は少なくなっており、大企業を中心にクラウド・コンピューティングの導入が進んでいる。
ITRが2012年10月に実施したクラウド・コンピューティングの利用動向調査から、従業員数3,000人以上の大企業に絞ったデータを図に示した。これによると、すでにSaaS(Software as a Service)を利用している企業は42.0%、PaaS(Platform as a Service)は33.3%、IaaS(Infrastructure as a Service)のうちインターネット経由の利用は27.5%、閉域網経由の利用は33.3%以上と、パブリッククラウドを利用している企業の割合は3〜4割に達していることがわかる。また、プライベートクラウドは、パブリッククラウドを上回る利用率(43.4%)となっている。
これらのデータを見る限り、クラウド・コンピューティングはごく一部のアーリーアダプタ(先進技術導入を好む集団)のソリューションではなく、国内ユーザー企業にとって「当たり前の選択肢」になっているといえよう。